「カンパーイ!」
食べ盛りなんで!って、食べ放題コースにした。
私が焼いた肉を丼いっぱいのご飯で胃の中にどんどん流し込んでいく勇征くん。
気持ちいいぐらいいっぱい食べていて、こっちまで楽しくなってくる。
こんなことに幸せって感じられるもんなんだって。
「聞いてゆき乃さん。俺この前フラれたの!ゆせくんは何考えてるか分からないって…。俺毎回その台詞でフラれるんだけど、どーいう意味っすかね?全く分かんなくて」
順調にお酒も入ってきて、ベラベラと私情を語り出す彼。
「そのまんまじゃないの?」
「え?そのまんまですか?」
「うん。何考えてるのか分からないって、勇征くんって喜怒哀楽彼女に出さないでしょ?かっこ悪い!とか、面倒くさい!とか、ださいと思ってない?」
「……あーまぁ…」
「女って生き物はね、仕事よりも友達よりも、彼氏が一番なの。いつどんな時だって彼氏が一番なの。だから常に自分を愛してくれている彼氏を望んでいる。例えばデートの帰り際、バイバイのキスは毎回してる?」
「…義務みたいなキスはしないよ」
「アウト!女は義務じゃなくて、デートプランのルーチンにサヨナラのキスは必須なんです!抱きしめてキスして名残惜しく離してバイバイ…そーいうシナリオが頭の中でできているから、そのルーチン通りにいかないと、あれ?この人私のこと好きじゃないの?って疑問を持つ。好きだから帰り際にキスをするのは当たり前な女からしたら、義務でも何でもないと思うの。そーいう不一致がつもりに積もって…グッバイフォーエバー!」
パチンと指を鳴らして言い切った私に、勇征くんはなるほどって顔で拍手をくれた。
「すごいっすね、ゆき乃さん。俺のことこんなに分かってくれたの……初めてかも。何でもっと早く出会えなかったんだろ、俺達…」
ハァッて溜息をついて勇征くんが目を伏せた。
……てか、なに?
かっこいい顔してそんなこと思うの?
え、私に興味もった?
もっと早くって、私と黎弥が付き合う前ってこと?
私と黎弥が付き合ってなかったら勇征くんは私を彼女にしてくれたって、そーいうこと?
そーいう意味?
「あ、なんでもないっす。今のは気にしないでください」
いや、すごく気になってるよ。
言葉に出しておいて、気にすんな!は、反則じゃない?
だったら言わないでよ。
そんな、捨て猫みたいな目で見るの、ズルイよ。