「…汐莉、参加すんの?」
吃驚した顔の夏喜に苦笑いの私。
「うん。最後だし…」
「誰と?」
「誰ってまだ決まってない…」
毎年夏喜に誘われなかったらって思うと、参加する勇気が出なかった私。
最後ぐらい、玉砕覚悟で勇気出してみようか、なんて柄にもないことを思っていたんだ。
「汐莉ちゃん、嬉しいよっ!出よう一緒に!」
「雪乃は勇征くんでしょ?」
「うん!…こうなったら誘ってやる!わたし、高校最後のダンパは絶対好きな人とでる!汐莉ちゃんも好きな人と出よう!」
雪乃にすら言えていない、私の気持ち。
ずっとずっと夏喜のことが好きで。
せっかく仲良くなったこの関係が壊れてしまうのが嫌で、怖くて。
表に出すことのなかったこの気持ち…
「たはは…そうだね」
「わーいわーい!」
ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ雪乃を見ていたら私の中にも勇気がわいてきた。
だからといってそう簡単に誘えるもんじゃない。
とりあえず参加する意思を示しておけば、いざって時に夏喜に声をかけても不思議じゃないよね?
「寝る」
夏喜がデスクに顔を埋めて寝てしまう。
毎年夏喜は私以外の子を誘っていた。
今年はどうかどうか、私に声をかけてくれないだろうか…。
夏喜が眠ったことでこの話題は消えていった。
―――だけど事件はすぐに起きたんだ。
「どうしよう…」
5現が終わった後、雪乃が教室から消えて、しばらくしたら放心状態で戻ってきた。
よろよろしながら私の席に来た雪乃は困ったような顔でそう呟いたんだ。
「どうしたの?」
「7組の嘉くんにダンパ誘われた…」
「えっ!?7組って勇征くんのクラスだよね…」
「うん。勇征くん…。嘉くんと勇征くんって仲良いじゃん…―――」
「勇征くん当然知ってるだろうね、嘉くんが雪乃を誘うこと…」
「汐莉ちゃんわたし、どうしたらいいの…」
泣きそうな顔で蹲る雪乃に何て声をかけてあげたらいいのかも分からなくて。
「嫌なら断れよ。自分で言ってたろ、高校最後のダンパは好きな奴と出る!って。諦めんなって雪乃」
話しを聞いていたんだろう黎弥がそう雪乃を慰めた。
そういう気の利くこと、なんで私は言えないかな…。
「黎ちゃんありがとう…。そうだよね、最後だもん…。でも嘉くんの気持ち思うと…辛い…」
「雪乃が落ち込む事ねぇよ。自分の気持ちに素直に頑張れよな」
ポンポンって黎弥の大きな手が雪乃を撫でて…
こういうのっていいなって。
男女の友情って、成り立つんじゃないかって思えてくる。
黎弥に限ってだけど。
だけどそんなものは本当は存在しないのかもしれない。