「何してんの?」
放課後。
加納くんに断りを入れに行った雪乃を心配してついていったのは優男黎弥。
雪乃も黎弥がいて少しホッとしてたから私は教室で待ってるってそう言ったんだ。
「夏喜…あ、雪乃待ってる」
空いたドアの所に手をかけてこっちを見ている夏喜にドキっとする。
「へぇ。断るの?加納のこと」
「んー。断るって。心配して黎弥が一緒に行ってる!」
「そ。で、汐莉は誰とダンパでんの?」
……今聞くんだ。
そこから動くことなく一定の距離を保ってる夏喜。
今ここには私と夏喜の二人きり。
教室にも廊下にも誰もいない。
チャンス、だよね。
立ち上がってゆっくりと夏喜の方に歩く私を真っ直ぐに見ている夏喜。
「夏喜、は?」
「俺が聞いてんだけど?」
ですよね。
そんな怖い顔しなくてもいいじゃん。
加納くんがどんな気持ちで雪乃を誘ったのか今更分かった。
そして「ごめんなさい」を、言いに行った雪乃の気持ちも。
夏喜と出たい!!
喉の奥から出てきている思いは、声にならないで飲み込んでしまう。
告白までもいかないけど、夏喜のこと好きって気持ちは伝わるはず。
「あの、私……な……」
ダンって音がして、えっ?って顔をあげた私の目の前に夏喜の綺麗な顔が見える。
これは、なに……
真っ直ぐに私を見つめて唇を寄せる夏喜に……
「何すんのっ!?」
手で夏喜の胸を押していたんだ。
こんなの反則……
何も言わずにこんなのずるい。
夏喜の気持ちが何も見えてないのに……
「…悪かったな…」
スッと私から離れる夏喜に胸がドクンと脈打つ。
謝ってほしいんじゃない!
「ま、待ってよ夏喜っ」
「なんだよ」
気づいたら夏喜の腕を掴んでいて。
振り返った夏喜は私をドンっと壁に追い込む。
ふわりと香水が鼻をつく。
「夏喜待ってよ、なんで?」
「…待つの嫌いなんだけど」
「わ、私は夏喜のこと……」
真っ直ぐな瞳に見つめられて何も言えない。
好きって一言がどうしても言えない。
一緒にダンパでたい。
それすら言えない。
「汐莉!?夏喜!?」
聞こえたのは黎弥の声。
廊下の向こう側からこちらに向かって歩いてくる。
大きな黎弥の背中に見え隠れしている沈んだ顔の雪乃と一緒に。
パッと夏喜から離れる私はそちらを向いて「お帰り」笑顔を見せた。
「なに、してんの?お前ら…」
黎弥の目が私と夏喜を交互に見つめている。
「なにも。話してただけ」
「断ったの?加納」
私に被せるように話題を逸らした夏喜。
黎弥の後ろにいた雪乃は小さく「うん」って。
「分かってたって、嘉くん。わたしが勇征くんを好きなこと。…応援してくれるって、勇征くんのこと…」
すごいな、加納くん。
私はそこまで察してあげられないし、そんなこと言えない。
毎年夏喜が私以外の女子を誘う度に勝手に傷ついていた。
不参加ならやっぱり誘われないんだ。
参加しないくせに誘ってほしいなんてむしが良すぎるよね。
「そっか。頑張ったね雪乃。今日はアイスも食べて帰る?黎弥の奢りだよ!」
「おい!なんで俺が?」
「わーい!黎ちゃんありがとっ!なっちゃんも一緒に行こう!」
雪乃がそう言うと、夏喜は私を一切見ることなく雪乃の隣を歩き出した。
そのまま自転車置き場で雪乃を後ろに乗せる夏喜。
だから当たり前に私は黎弥の後ろ。
乗り慣れた黎弥の背中は居心地が良くて安心できる。
なんだかんだで、優しい黎弥は私の癒しの存在なのかもしれない。