「汐莉、マジでダンパ参加すんの?」
自転車を漕ぎながら黎弥が小さく聞いた。
そうやって気にかけてくれる所も優しいよね。
「うん…」
だけど夏喜をどう誘えばいいのか分かんなくて。
「もしかして、夏喜と出たい?」
不意に聞こえた黎弥の言葉にドキッとする。
前を向いたまま言葉を発する黎弥がどんな顔なのか私には見えなくて。
「あの、黎弥?」
「違うなら俺と出ろよダンパ」
……え?
横に座って黎弥の腰に回した腕に、そっと手が重なったことで、私の心拍数が更に上がる。
「ちょ、黎弥…?」
「お前2回も言わせるの?確信犯か?たく。仕方ねえからもう一回言う。ダンパ、俺と出て欲しい。俺だって最後のダンパぐらい好きな奴と出たい…」
うそ。うそ。うそ。
黎弥が私を?
うそだよ、そんなの。
「冗談だと思うなよ?マジで言ってる。真剣に考えろよ、俺のこと…。後悔したくねぇ、諦めないから汐莉のこと」
そうなのかも?って思っていなかったわけじゃないけど、でもまさかって。
黎弥に限ってまさかって。
何も答えない私にチラっと黎弥の顔が後ろを振り返る。
ドキッとして俯く私を横目で確認して笑われた。
「気持ちの整理がつくまでそのままでいいから」
優しい黎弥の告白に、胸が痛かった。
こんなふうに言われて断る女はいるのだろうか?
黎弥のこと、男として見ていた私じゃないけど、黎弥の想いは十分に伝わった。
それを嬉しいと思わない女がいたら見てみたい。
「ありがとう」
「やっと喋った、ばーか」
前を走る雪乃と夏喜を見て何とも複雑な気持ちでいっぱいいっぱい。
だけど決めたんだ、最後だから頑張る!って。
心の中で決めてる気持ちがあるなら、答えは早く出した方がいい。
「夏喜」
「なに?」
サーティワンの前でガラスに顔をピッタリくっつけて楽しそうに喋りながらアイスを選んでいる雪乃と黎弥。
そんな2人を一歩下がった場所から見ていた夏喜のところにさり気なく移動した私は夏喜を呼んだ。
「後で話したい…」
そう言う私をジーッと見てニッコリ微笑む夏喜。
「良かったね。ダンパ黎弥に誘われて!似合ってるよ、お前ら!」
……なによ、それ。
聞いてたの?
聞こえてたの?
どっちでもいい。
そんな言い方……ずるい。
夏喜にだけは言われたくないのに。
夏喜にだけは……―――――「うん」。
何も言えなかった。
否定すらできない私を馬鹿だと笑えばいい。
だけどやっぱり今更変われない。
どんなに頭で心で願っていてもどこかでストップをかける傷つくのが怖いこんな弱い私に、夏喜が気づくわけない。
その日の帰り、黎弥のダンパを受けたんだ。