本店をかけた戦いの火蓋は切って落とされた。
「陸、グロスの色、ローズに変えて。」
「気合い入ってんね?唯月ちゃん。」
「そりゃそーよ。」
ヘアメイク担当の陸に顔を造ってもらいながらも手中のスマホでは常連さんから昨日接客した新規までお誘いの連絡。
LINEを打っている最中でも返信は返ってきていて、それにまた返事をする…それの繰り返しだ。
「やった!!村上のおじ様同伴してくれる!!」
ロッカーから取り出した香水は村上にプレゼントして貰ったもの。あんまり匂いに関心のない村上が唯一好む香りだとかで。香水はその日の同伴者の好みに合わせていた。
「大丈夫?そろそろ手出されない?村上さんに。」
優男陸は言っちゃえば心配性で、こうしてキャストのメンタルもきっちりケアしてくれていた。
「大丈夫よ。別に抱かれるぐらいどうってことない、」
目の前にはグロスを塗る真剣な陸の顔。
この綺麗な顔は、ヘアメイクで終わらせるには少々勿体ない気もする。
「俺が唯月ちゃんの彼氏だったらそれ悲しいから。確かに女の子達はみんな言い方悪いけど商品だけど、それでも心は無くさないで欲しい。俺は素の唯月ちゃんも好きだよ。」
「…分かってるよ。ありがとう陸。でも千紗には絶対に負けられないの。No.1で本店に行くのは私。応援して!」
差し出されたティッシュを1回口に含むと陸が儚く微笑んだ。
「じゃあ行ってきます!」
カツンとヒールを履いて、村上のおじ様の好きなパープルカラーのドレスを纏った私は同伴の為そのまま黒服くんに送りを頼む。