「朝海せんせっ!」
歓声の中、聞こえた声に顔を向けると思いっきりこっちに向かって走ってくる未来がいて。
健太はコートの上、大の字で息苦しそうに呼吸を繰り返している。
「言ったでしょ、俺が勝つって!」
「言ったけど、本当に勝つなんて、」
「愛の力だよ、朝海先生!!俺の事、見て?ね?」
小首を傾げて可愛い子アピールする未来に心臓が爆発しそうになった。
でも…ここでイエスはとてもじゃないけど。
「未来くんの気持ちは嬉しいけど、」
「ストップ!NOはダメ。先生とか生徒とか今この場では考えないで。俺の事、アリ?でしょ?」
強引だなぁーって思うけど、恋愛はこのぐらいグイグイきてくれる人じゃないきゃ嫌だ。
でもそれは自分も気に入った人限定だけれど。
小さく息を吐き出したわたしを、それでもワクワクって顔で待っている未来。
「どっちかといえば、アリ。」
「よっしゃあ!!!」
未来のガッツポーズでまだギャラリー達からの歓声。
だけどわたしは大の字で転がっている健太の所にそっと膝を着いた。
「神谷くん。」
「なに?」
不機嫌そうに起き上がった健太は乱れた髪を整える。
「マジで深堀と付き合ったりしないよね?」
ギュってわたしの腕を掴んでそう聞く。
まるで捨てられた仔犬かのような泣きそうな目で。
「せめて神谷くんと同じ年に生まれてきたっかたな…。そしたら正々堂々と恋、できたのに。…ごm」
「けど、今じゃなきゃ出逢ってない。俺は今の朝海先生と恋がしたい。」
「ごめんね。」そう言おうとしたら、後ろから遮るように聞こえた未来の声。
健太と2人後ろを振り返ると、真っ直ぐとこちらを見ている未来がいる。
「神谷先輩、そろそろその手、離してください!」
健太の握っているその手を剥がすようにわたしを引き寄せる未来に、また心拍数があがる。
なんなの、この子。
剛典よりずっと欲しい言葉をくれるんだけど。
「深堀てめぇ、」
「神谷先輩かっこいいからすぐ女できるっしょ!!」
…いいのか悪いのか、すこぶるポジティブな未来の言葉に、健太は怒る気も失せたのか眉毛を下げて苦笑い。
そのままわたしの手を引っ張って、ざわついた講堂から連れ出された。