逢いたくて2


【side 雪乃】



自分でもなかなか凄い行動力だなぁなんてちょっと笑える。翌日の誕生日を控えた私は最後の望みをかけてロスへと旅立った。誰にも何も言わずに出てきちゃったから、ネコあたりが心配しているかも、いやもしかしたらネコになら気づかれてるかも?…なんて思うものの…明日だけはどうしても直人に逢いたかった。

ネコはああ言ってくれたけど、もしかしたらもう直人には別の恋人がいるかもしれない。それならそれでむしろ諦めもつく。だけどもしもそうじゃなかったら…もしもまだ直人の中に私への想いが残っていたとしたのなら、私も素直に自分の気持ちを直人に伝えたいって思う。

初めての海外だった。ただ直人に逢いたいってだけでチケットを取って飛行機に乗った。周りはみんな外国人ばかりで言葉もあんまりよくは分からない。それでも直人のいる世界をこの目で見たいと思った。

できるのなら、2人で一緒に…――――。



「あ、とりあえずLINEの設定変えなきゃ、だよね。」


本を見ながら海外用のWi-Fiに設定し直すとすぐにLINEにメッセージ。きっと日本時間で0時ぴったりにメッセージをくれたんであろう、ネコやえみ、後輩達からもおめでとうのメッセージが入っていた。

直人からのメッセージは当たり前になくて、そんなこともこの一年半でほんの少しだけ慣れてしまった。

でも…―――「ゆせ、」え?誕生日教えてないよね?これもネコからの情報!?絵文字なんて使わなそうに見えなくもないのに、すっごい可愛いスタンプとハートの多さに苦笑い。


「私でもそんなハート使わないし。」


思わずププっと笑ってしまう。一生を思えば30歳はまだ半分に満たないのかもしれない。けれど長い人生の中で輝けるギリギリの10年になるんだろうって、儚く思う。

みんなにありがとうのスタンプを送ると、ゆせだけすぐに既読になった。え、あっちまだ明け方だよね…


「げ、着信…。―――はい。」
【…はい。あ、俺がかけたのか。えっと八木です。】
「…うん。どうしたの?こんな朝早くに。」
【雪乃さん既読になんないから、何度も開いて見ては閉じてって繰り返してたらウトウトしちゃって。…逢いたいです。誕生日の今日。】


そんな事言ってもらう資格、私にはないのに。


「ゆせ。今日はごめんね。私も逢いたい人がいるから、」
【…まさか、ロスですか!?】
「…またネコから聞き出したの?」
【あ、はい。全部聞きました。直人さんのこと。でもだからって僕の気持ちは変わらない。】
「ゆせ、ごめんね。有難いと思ってる。でも私、やっぱり直人さんしかいないから。だからごめんなさい、もう…そっとしておいて。」


何かを言いかけたゆせの言葉を無視してそのまま電話を切った。今は直人の事以外頭に入らない。

小さく息を吐き出した私は、うちのホテルの系列に出向いた。