逢いたくて1


【side 朝海】



「あれ?雪乃さんは?」


お客様を社長室に案内しがてらウェディング部を覗く。いつもそこにいる雪乃さんのデスクはカランとしていて、存在している気配すらない。明日は雪乃さんにとって大事な大事な日なのに。


「お休みですよ、雪乃さん。10日まで。」


手前に座っていた社員さんにそう言われて「え、」素っ頓狂な声が出た。なんだよ雪乃さん。今夜はお祝いしてあげようと思ってたのに〜。

だけど、そんな浮かれポンチなあたしがソレに気付くのは翌日の事だった。



せっかくの土曜日なのにてっちゃんは仕事だっていつも通りの時間に出て行った。どうしようかなって考えていたらゆせくんからLINEでランチに誘われた。



「…初めてだよね?」
「はい。迷惑でしたか?」
「…別に。どーせ暇だったし。雪乃さんのお誕生日祝うつもりだったけど、つかまんないし雪乃さん。」


そこまで言ってハっとした。目の前のゆせくんはあたしには見せた事のない表情でふわって微笑むから。


「雪乃さん、誕生日なんすか?」
「…うん。」
「いつ?」


なんか言いたくない。この男に負けたと思うとゆせくんに対して無駄にライバル心が湧き上がる。でも…―――



「今日。今日で雪乃さん30歳。本当なら直人さんと結婚するはずだった…。」


悔しいから直人さんの事も付け足してそう伝えるとゆせくんがアイスコーヒーを一口飲んで少しだけ身を乗り出した。


「その話、詳しく聞かせてください。」


深々と頭を下げるゆせくんに、なんとも複雑な感情を覚えたなんて。






『ネコ、一つだけ頼み聞いてほしい。…あいつに、雪乃のことちゃんと守ってくれそうな奴が現れて、もしもその時雪乃が俺を想って迷ったりしたら…―――ネコが雪乃の背中押してやってほしい。』