9日の23時。羽田空港に到着した。ちょうど最終バスが出ていてそこに乗り込んだ。てっぺんを超えてから地元の駅に着いて、バスを降りる。
とてもじゃないけど初海外から帰ってきた女とは思えない。星一つ見えない曇空の下、マンションまでを歩く。一歩進むと空から雨が降ってきた。
まるで泣いてるみたいな、大粒の雨がシトシトと地面を濡らしていく。足早に家路を急いでエントランスに入った時だった。
「何してんの、」
俯いていた顔を上げるとちょっと遠慮がちに私に近寄る。
「あーと、うん、その…やっぱ逢いたくて。ここで待ってたら逢えるかな?って思って。」
あんな言い方したのに。勝手に電話切ったのに。
「馬鹿よ、ゆせ。」
ポロッと涙が零れた。さっきまで涙なんて1ミリも出なかったのに、ゆせの顔を見た瞬間、胸の中がぽわっと温かくなったような気がしたなんて。
腕を伸ばしてゆせに触れると雨のせいで冷たくて。2人して傘もささずずぶ濡れで。
「いつから待ってたの?」
「あー忘れた。結構前。雪乃さん、あっちで直人さんに会えたんですか?」
「…もういいの。もう終わった。全部置いてきた。」
ぎゅっとゆせの腕を取る。でも次の瞬間思いっきりゆせに抱きしめられて…―――
「俺がいる。俺がずっと傍にいる。」
直人以外の男にこんなに強く抱きしめられるなんて、思いもしなかった。
ゆせがいてくれてよかった…
「自由に生きろ。雪乃の好きなように。いい奴が現れたら好きになって幸せ掴んで欲しい…。」
その言葉通り、
―――――30歳の誕生日を迎えた翌日、私はゆせを部屋に通した。