ベッドの中で冷えきった身体を温め合うかのように、強く強く抱き合う。
「雪乃っ、」
小さく何度も私を呼ぶゆせの頬に手を添えると、その手を掴んでそこに甘く口付ける。だからゆせの首にその腕を回すと私を抱き抱えるようにキスを繰り返す。甘く唇を噛むゆせに私から舌を絡めると「可愛い、」優しく微笑んだ。
じゅるっと舌を舐めるゆせは、ちょっとエロくてずるい。綺麗な顔を存分に艶やかに魅せて私をゆっくりと脱がせていく。
「ゆ、せ…――勇征…、」
「もっと呼んで。ずっと俺だけ呼んでて、」
涙で濡れる頬を何度も何度もゆせの綺麗な指が拭ってくれた。もう二度と戻れない、直人の所には。
もう二度と…―――――――
――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
目を覚ますと当たり前にそこにあるゆせの温もり。直人より遥かに大きな身体で私に巻きついていて。…もうやめなきゃ、直人よりって考え方は。前に進まなきゃ。直人も前に進んでいるから。
「ちょっと浮腫んでる、」
柔らかい頬に手を添えるも「えっ、」…よく見ると右手の薬指に見覚えのない指輪。こんなの持ってない…
「ゆせ?」
「んー。」
「ゆせ、これなに?」
わさわさとゆせの肩を揺すると薄ら目を開けた。私を見てニッコリ。
「雪乃おはよ、気に入った?」
…どうして、なんて愚問かな。きっとネコに聞いてる。
『30歳の誕生日は何がほしいの?』
結構前に聞かれた直人からの質問。私はその時間違いなくこう答えたんだ。
「…エンゲージリング?」
「いや、まさか。でも予約しとく。ちゃんと雪乃を養えるような男になるまでは、それで予防線はっといて。」
本当の本当は直人から貰いたかったこの場所。直人に嵌めて欲しかったこの指輪。
嬉しいのか、悲しいのか、切ないのか、苦しいのか…分からない感情の涙が溢れそうになる。
「これ、私が欲しがってたのと似てる。」
「よかった。すごく似合ってる。」
ふわりとゆせの腕の中。ここが私の居場所、それでいいんだよね?