休み明け、出社した私は早々に哲也先輩に捕まった。深刻な顔で私の腕を掴んだ哲也先輩。首を傾げると深く息を吐き出した。
「哲也先輩?おはようございます。」
「…雪乃、この休みどこ行ってた?」
「え?この休み、ですか?」
「ああ。…反則かもしれないけど、直人、」
「いいの、いいんです、もう。」
半ば強引に哲也先輩の言葉を遮ったもんだからか、美顔を歪ませる哲也先輩。
「あんな風に泣いてごめんなさい。でももう吹っ切れました私。もう前に進みたいんです。ほら見て?」
スッと哲也先輩の顔の前、昨日ゆせに貰った指輪を嵌めた右手を差し出す。
「…なんだよこれ、」
「勇征に貰いました。私のこと守りたいって…ずっと傍にいてくれるって…そう言ってくれたんです。やっと前に進めそうなんです私。だから哲也先輩、見守ってて?ね?」
…泣きそうな顔で私の指輪を見つめる哲也先輩が何を言おうとしたのかは分からない。でももう直人のことで悩むのはやめようって…
「…八木と付き合うってこと?」
「はい。」
「直人のことはもう忘れたってこと?」
確信に迫る哲也先輩の言葉に私は笑顔で頷いた――――。
哲也先輩とそんな話をしたもんだから、始業約10分で受付嬢のはずのネコがウェディング部に顔を出した。
「雪乃さん!!!!」
そう呼びながらも視線は私の右手の薬指にいっていて。
「…―――直人さんはもういいの!?雪乃さん…。」
哲也先輩と全く同じことを聞かれた、同じような泣きそうな顔で。私と直人のことはこんな風に第三者も辛く巻き込んでしまうことなんだ…って、それはそれで少し悲しい。
「ネコ、仕事は?」
「仕事なんかよりも大事な話してるんです!」
誤魔化さないで…って続きそうなネコの言葉に私まで泣きそうな顔になりそうで。慌てて笑顔を作ってネコの腕を取ると、仕方なく隣接しているホテルのラウンジに移動した。
今日は確かここでゆせも研修って言ってたなぁ〜なんて思いながら。