逢いたかった人の帰国2


それからまた1週間が過ぎたその日、えみと岩ちゃんが社内で結婚を発表した。


「雪乃、お願いがあるの。」
「うん?」
「私達の結婚式、雪乃にやって貰えないかな?」


思ってもみない嬉しい事で。そんなのひとつ返事で受けるに決まってる。


「もちろん喜んで!私でよければ。」


だけどその後二人とも真剣な顔付きに変わる。え、なに?小さく息を吐き出した岩ちゃんは、真っ直ぐに私を見ると、その綺麗な口を開いた。


「できればそれ、帰国した直人さんと一緒にお願いできませんか?雪乃さん。」


―――――え?なんて、

カツンって足音と見慣れたシルエット。顔を上げた私の視界に入る懐かしいその姿。


「雪乃、ただいま。」


他の誰でもなく私にそう告げた直人に、胸の奥がチクリと痛む。動けない私の前で止まると、「一番最初に、雪乃に逢いたくて…。」デジャブのような直人の言葉に、鼻の奥がツーンとしてくる。


死ぬほど逢いたいと思っていた直人が今私の目の前にいる。この日本で一番最初に私に逢いに来てくれた直人に消えていた3年間が勝手にフラッシュバックしてきそうで、慌てて私は直人から目を逸らした。

ギュっと右手の薬指にある指輪に触れて、ゆせの笑顔と優しさと温もりを思い浮かべる。


もう、私の未来に直人はいない。



「岩ちゃん、えみ。あの少し考えさせて。」


直人に触れることなくそう言って足早にこのフロアを出た。ドクン、ドクン、と激しく脈打つ心臓。この状況が飲み込めなくて、


「…なんで、」


口元を抑える私に、カツンと後ろから聞こえた足音。ビクッとして振り返ると…


「雪乃っ、」
「ゆせ…、あの…あの、私…っ、」


ぎゅっとゆせの腕を握る私を片手でふわりと抱き寄せた。


「今日泊まりに来て。」
「わ、雪乃から誘ってくるなんてすげぇ嬉しい。一緒に帰ろ!ね?」


コクっと頷いてゆせから離れる。きっとゆせは直人が帰国したことは知らないだろうから笑顔を向けて戻らないと。


「ん。ゆせ…大好き。」
「雪乃?え?あの、」


真っ赤になって照れるゆせを見て、心を落ち着かせた。