「立花さん!もういい!!」
バタバタと足音を立ててゆせが私の隣にしゃがみ込んだ。
「よくない!直人さんは今でも雪乃さんを愛してる。ゆせくんなんかよりもずっと、ずっと…。」
「それは、立花さんの思い込みだよ。俺も雪乃の事好きだよ。ちゃんと愛してる。」
直人が誕生日帰国してた?私に指輪渡すために?…冗談でしょ。そんなの信じない。
「だって直人さん、ガールフレンドとホノルルに旅行って、」
「それが嘘だったんです!直人さんあれでも仕事はちゃんとするしフレンドリーだから人気あって、雪乃さんの事も話してて、だからあの日雪乃さん本人がきてちょっと意地悪してやろう!って、そんな軽い気持ちだったみたいだけど、そんなくだらないことで崩れるなんておかしくないですか?本当なら2人は再会して結婚の約束をするはずだったのに、なんでよっ、なんで違う道歩いてんのっ!?ねぇ、なんで?」
ネコが私の肩を掴んで揺らすから身体がグラグラして。
「あれ程口止めしたのに、ダメな子だなぁ、全く。」
いつの間にか姿を見せていた哲也先輩は、後ろの直人に向かって「直人、ごめん。」そう言った。ゆせが通したの?ゆせを見るとなんともいえない顔で私を見ている。
捨てないで…なんて顔に書いてあるような気がした。だけど直人の視線が飛んできて…
「…ネコの言ったことは気にすんな。…けど間違ってない。突き放したのは俺だし雪乃をそうさせたのも俺。だから責めるなんてしないし、悪いとも思ってない。ただ…―――この3年間、一度も雪乃を想わなかった日はない。俺は雪乃以外はいらねぇ…それが真実だよ。」
ふわりと伸びてきた直人の手。大好きな大好きなその温もり…私の頭に触れる寸前で、その手をゆせがガっと掴んだ。さも刺すような目つきで、直人を見ている。
「それは僕に宣戦布告ってことですか?」
私を隠すように大きな背中で直人からの視界を遮った。背中だけでも分かる、ゆせの気迫。普段温厚なゆせからはとてもじゃないけど想像すらできないド低い声。
「…まぁ、そうだな。」
「分かりました、うけてたちます。でも…絶対に負けません。雪乃を幸せにするのは、直人さんじゃなくて、この僕です、絶対に!!!」
こんなに、こんなにもゆせが感情的に言葉を発したのは、初めてだった。
何も言えない自分が嫌になる。