「もしもね、ゆせが嫌だって思ってるならえみ達の結婚式、哲也先輩に変わって貰ってもいい…って思うの。」
湯船の中、あぐらをかくゆせに背を向けて同じ方向を向いてつかっている私達。一人暮らしのお風呂なんて狭くて、ゆせの大きな身体と一緒に入るとキツキツだけど、今日はどうにも離れたくなくて私から誘った。
私を後ろから抱きしめながら、肩に顎を乗せているゆせがチュって小さく何度となく肩やらうなじやら頬にキスをするのがくすぐったい。
「…うーん。気にしてないとは言い切れないよ。けど仕事は仕事だし。俺もあの人に仕事教わってるし…。せっかくのえみさん達の頼みだから、俺も雪乃には頑張って貰いたいな…。」
ちょっとだけ寂しく思うこの心はなんだろうか?子供みたいに駄々を捏ねて欲しいわけでもないんだけれど、それでもゆせには素直な気持ちを言い続けて欲しいなんて。私の前で大人ぶるゆせよりも、全身で愛をくれるゆせを…――――いつの間にか求めてしまっていたのかもしれない…
くるりと向きを変えてゆせの上にラッコ座り。背も高くて筋肉バキバキで体格のいいゆせとはこの座り方がよく合っていて、正面から抱きつくと小さな溜息をもらすゆせ。湯煎の中ではほんのり角度をつけはじめているゆせがいてそれをポチャンと指で握った。
「あ、ちょっと、雪乃っ…、」
「ゆせ、」
「ンッ、」
反対側の腕をゆせの首にかけてそのまま唇を舐めた。甘い吐息を漏らすゆせの口内に舌を侵入させるとゆせがビクッと身震いをした。
「やば、気持ちい、」
苦笑いで目を細めるゆせが耳元で甘く息を吐き出す。そのままなぞる様に手で擦りあげるとゆせの額から汗がポツリと流れ落ちた。すぐに角度を増すゆせは私の背中に腕を回してグイッと引き寄せると胸にちゅ、と口付ける。突起を舌で転がされて私の身体に快感が走る。
「はあっ、勇征っ、」
「ンッ、雪乃っ、」
狭いバスタブの中、ゆせが離れないように私の方が必死だったのかも、しれない。
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「…逆上せた?大丈夫?」
お風呂を出てベッドに横になる。ウチワで風を送ってくれるゆせは若いからやっぱり元気で。30歳を過ぎると自分で思うよりも身体が辛くなっている気がする。
「…ゆせ。」
手を伸ばせばギュっとその手を握ってくれるだろうゆせ。だけど「ぎゅーして。」とか「抱きしめて。」とかちょっと恥ずかしい。
こんな時、不意に思い出してしまうのは当たり前に直人で。こういう私の小さな気持ちにも、直人はいつも気づいてくれていたことを、今更ながら思い出してしまう。直人が日本にいない時は思い出さずにいたのに、ここにきて、直人が手に入る距離になった途端、私の気持ちがグラつく。
どうせだったら「嫌い」って言われて捨てられた方がよかった。あんな別れ方を選んだ直人を今更選べるわけがない。
「ゆせ、一緒に住む?」
「え?」
「忙しくなるほどゆせと過ごす時間があったら嬉しい。」
「…まぁもう住んでるようなもんだけど、でもめっちゃ嬉しい。ありがと、雪乃。」
ギュっと抱きつく私をその大きな身体で抱き留めてくれる。やっぱりこの温もりがないと生きていけない…―――