頭の中がぐちゃぐちゃだ。直人のせいで、今まで見えていた景色が分からなくなりかけている。こんなの私じゃない。
「…頭いて。」
午後になって熱があがってきたのか、身体の節々が痛い。それでも直人以外は私の不調に気づく人はいなく、やっとの事で残り2件の打ち合わせを終えた私はフラフラしながらウェディング部に戻った。
「…雪乃、大丈夫?」
「ゆせ、」
ゆせの顔を見た途端、身体の力が抜けてその場に崩れ落ちそうになった。でもゆせが片手で私の身体を抱きとめる。
「ごめん、気づけなくて。」
おデコに手を当てるゆせに苦笑いで微笑んだ。
「直人さん?」
「うん。今日は打ち合わせしないからさっさと病院連れてけって。」
…なんだかんだで、優しい人。ちゃんと私が待っているゆせをよこす直人はやっぱりずるい。この優しさはずるいよね。
「俺車出すから病院行こう。」
「運転できるの?」
「普通に。」
「でもゆせにうつったら大変。」
「いいよ、雪乃の風邪なら。俺にうつして早くよくなって。」
ポンポンって優しく頭を撫でてくれるゆせに甘えて私達は早々病院に行った。
病室の前でゆせと2人、隣り合わせで座っている。
「あのさ、俺ね、来月誕生日なの。」
「…え?いつ?」
「5月6日。だからさ、2人で旅行とか…どうかな?って。」
「あ、行く。行きたい!」
「よかった。どっか行きたいとこある?」
正直ゆせと2人ならどこだっていいと思う。行く場所よりも一緒に行く人のが大事で。でもせっかくのお誕生日兼ねてなら、
「ゆせが行きたい所に連れてって?」
「いいの?」
「うん。」
「分かった。じゃあ探しとく!」
ニッコリ微笑みあった所で名前を呼ばれた。こういう普通の幸せが当たり前だと思ってしまったら終わってしまいそうで。
ゆせが隣にいてくれるってことを、噛み締めていたんだ―――