インフルエンザじゃなかったって事で、少しだけ気持ちが楽になった。それでもゆせの運転する車の助手席でボーっと外を眺めていたんだ。
「寝てていいよ、雪乃。」
赤信号でふわって大きな手が伸びてきてゆせが私の髪を撫でた。
「ん。ありがと。」
窓の外に視線を移すと、スーパーから哲也先輩が出てきたのが見えた。
「ゆせ、待って。スーパー寄って!」
「え?左の?」
「うん。」
青に変わると右にハンドルを切ってスーパーの駐車場に車を止めた。窓を開けた私に気付いた哲也先輩がほんの少し自嘲的に笑うとこちらに近寄った。
「具合は?」
「風邪でした、ただの。御迷惑かけてばかりですみません。」
「可愛い後輩の面倒見るのはすきなんだ、俺。」
「…家まで送ります。乗って行ってください。」
私の言葉に苦笑いで首を横に振る。なんだろう、物凄く違和感があるんだけどそれが何か分からない。ゆせを見た哲也先輩は「雪乃を頼むぞ!」至っていつも通りなんだけど…。
熱があってボーッとしていたから。そんな言葉で片付けたくないけれど、この日感じた違和感がとんでもない事だったなんて、気づきもしない。