早めに病院に行かせてもらったお陰で熱はすぐに下がってご飯も食べれるように回復した。だから翌日マスク着用で出勤した私を見て、それでも苦笑いを零す直人。
「無理すんなって言ったのに、相変わらずだな。」
ポスって私の頭を撫でる直人にちょっとだけ微笑んだ。この人は私の行動全てを分かっていて理解してくれる。だから言わずとも私の考えてることなんて御見通しで…
「昨日できなかったから。えみと岩ちゃんの式の打ち合わせ、」
だけど私がそこまで言うと「あーそれな、」直人が言葉を濁した。それから私の腕を掴むとほんの少し人気のない場所まで連れていかれる。
「なにかあったの?」
「うん。実は昨日岩ちゃんとこの婆ちゃんの体調があんまりよくねぇって…。できれば日程早めにできないかって相談があって…、」
「…そう、なんだ。」
「うん。生身の嫁さんちゃんと生きてる婆ちゃんに見せてあげたい…って岩ちゃんが。それで一つだけ空いてるとこあって、急遽そっちで式あげることに…って。雪乃の具合が戻ってからちゃんと説明するつもりだった。勝手に決めて悪かったな。」
「うううん、ありがとう。ごめん、こんな時に体調管理できてなくて。どこの式場?」
…なんとなく直人の顔が焦ったように見えた、気がした。
正直、4月から6月は式場を抑えるのは容易じゃない。特に6月は大安に限らずどこもかしこも埋まっているのがほとんどで。
「直人さん?」
「場所は…アニヴェルセル表参道…で、日時は、…6月8日。」
え…―――――
おかしいよ。そんな人気の所、6月8日なんて2ヶ月きってるのに…
ギュッと直人の腕を掴む。
「…いつから?いつから予約とってたの?」
苦笑いで目を逸らす直人だけど、私がもう一度直人の腕を強く握ると困ったように眉毛を下げた直人が小さく答えた。
「5年前だよ。…一年後に伸ばしたのは3年前だけどな。…――――泣くなよ、ごめんって。」
ふわりと直人の腕が私を包み込む。大好きで大好きで安心できるたった一つの直人の温もり。
どうしてあの時、直人を信じきれなかったんだろう…―――今更後悔してももう遅いのに。