「…懐かし…。」
直人と昔よく行ったbar。勿論ながらゆせとここに来たことはないし、あれから誰かとくることもなかった。
大人ぶってカウンターのbarとか憧れるー!って2人で探し歩いてやっと見つけた地下の隠れ家みたいなココ。
「…病み上がりだから、2杯までな。」
「3年前までは1杯だったのに?」
「…まぁ、今は俺のもんじゃねぇし。」
「…うん。」
その日、私達がすれ違ってしまったあの日の事を直人は私に丁寧に話してくれた。
今更のお話。だけど、今更どうする事もできないけど、それでもあの時直人を信じていれば…そう思わずにはいられないのは、変わらず直人が私への想いを与えてくれるから、だけなんだろうか…?
お酒2杯が簡単になくなるその濃い3年間は、今更取り戻すことなど到底できない。
できないけど、それでも心のモヤがとれない私は一体どうしたらいいのだろうか。
「じゃああの時の着信はその誤解を解くために?」
たった一度だけ届いた直人からの無言のメッセージを私は心にしまい込んだ。誰だって傷つくのは怖い。私にはもうゆせがいたし、それもやっぱり今更で。
だけど隣に座っている直人はちょっとだけ苦笑い。こーいう時は、大事な事を隠しているって分かってしまうのも、今更。
「…勿論それは1番伝えたかったことで。だけど気になる事が1つあって、」
「…気になる事?」
1口水を飲んだ直人は、小さく微笑むと「そろそろ出ようか。」私の手を取った。
―――外に出た直人は真剣な面持ちで私を見つめた。
「ネコの事で。」
「え?ネコ?」
「…あぁ。あいつ、また昔みたいに他に男作ってる。てっちゃんに言えない事も俺がずっと聞いてたから。そーいう気持ちのはけ口も俺は無くしちまったから。俺にも責任はあると思ってる。」
ふと頭に浮かんだ昨日の哲也先輩。
そうだ、あの時感じた違和感はお弁当。一人分のお弁当を咄嗟に後ろに隠したんだ、哲也先輩は。いつもならネコがご飯作ってるはずなのに。
「…直人さんがいなきゃダメだったのは、私だけじゃないのね、」
ネコも、直人をそれ程までに頼っていたなんて、今更知った。