「初めまして、神谷健太です。」
深く丁寧に頭を下げたそいつの後ろ、真っ青な顔でこちらを見ているネコ。
完全に怯えてるのが分かる。
「あの、」
「哲也先輩が倒れたわよ、ネコ。」
「…―――え?」
瞬きを繰り返して眉間にシワを寄せるネコに小さく息を吐き出した。
直人に「冷静にな。」そう釘を刺されたものの、あんなに弱っている哲也先輩を前に冷静になれる自信が無い。哲也先輩は本当に私と直人を、直人がロスに行ってからもずっと側で見守ってくれていた一人だから。
「自分が何してるか分かってるの?ネコ。」
苦虫潰したような顔で唇を噛み締めるネコを守るように隣の神谷健太が「あの、」口を挟む。その外見のチャラさにさっきからずっとイライラしている私。こんなチャラ男のどこがいいのよ、全く。哲也先輩に失礼だ。
「すいません。全部自分の責任です。朝海のこと、責めないでください。」
「健太…、」
「部外者は黙っててよ。私は今ネコと話してる。」
思わず熱くなる私に隣の直人が「雪乃、」一つ名前を呼んだ。直人を見るとちょっとだけ困ったように眉毛を下げている。分かってるよ、分かってるけど…
「だからこの前結婚の話した時逃げたのね。あれがネコのSOSだって気づけなくてごめん。」
そっとテーブルの上、ネコの手に自分の手を重ねた。
「雪乃さん…」
涙ぐむネコをどうにか助けてあげたい。