眠れないなんて思っていたものの、身体は病み上がりで疲れていたせいか、吃驚するほど深い眠りについた。
翌朝起きるとベッドの中は一人で。
「んー、ゆせー。頭痛い、頭痛薬持ってきて。」
寝惚け眼で身体を起こすと、ベッドの下、布団を敷いた上にネコがこちらを見て困ったように眉毛を下げた。
そこで思い出す、昨日の事。この部屋には今ゆせはいなくて、私は直人を選んだという事も。
「あーっと、ネコおはよ!ご飯作るね。一緒に食べよ!」
「…はい、」
儚く微笑むネコは、昨日の涙で思いっきり瞼が腫れていた。
そうしてネコと一緒に出勤した私。哲也先輩がそんな私達を出迎える。でも、
「あたし、先に行きます。」
やっぱりネコは、哲也先輩を避けるようにスタスタと歩いて行ってしまった。
「哲也先輩おはようございます。もう体調は?」
「一日寝れば治るよ。それより、朝海の事ありがとう。」
「……先輩、神谷健太の事どーするつもり、ですか?」
もう濁しも何も必要ないって、直球で哲也先輩に投げかけたものの、後ろに見えた直人の姿にドキッと胸が踊った。
「…雪乃俺は、朝海の幸せが一番なんだ。俺が傍にいることが、朝海にとっての最大の幸せだってずっと思ってきた。…どこで道を間違えたんだろう、俺達…。」
本当の本当はネコが神谷健太を本気で好きなんだって分かってる。でも哲也先輩のネコへの気持ちを知ってる以上、私にはネコの背中を押してあげることも出来なくて。
一番好きな人と一緒に人生を送れるという事が、どれだけ幸せで奇跡なのか、私にも少しぐらい分かる。
「雪乃、おはよう。よく眠れた?」
クマができている私の下瞼を指で擦る直人に苦笑い。よく見ると大きなキャリーケースを持っていて。
「これからロスに戻る。」
そうだった。直人とまた少し離れ離れになるって現実を突きつけられた。