ネコを連れて帰った哲也先輩。
一人で帰る月夜路。星空を見上げて目を閉じる。浮かぶのは直人…ではなく、ゆせで。
あんなに直人と離れたくないって思っていたのに、どうしたんだろう?
うううん違う。離れるって思って寂しいって感じるのは仕方の無いことで。それを恋と間違えてしまったのは私で。
直人といると居心地が良くて大切な事も霞んでしまったのかもしれない。
ポケットから取り出したスマホ。LINEの画面を開いて直人に電話をかけた。
【雪乃?どうした?】
「直人さん…今、平気?」
【ちょっと待ってな、場所移る。】
カツカツって足音がしてすぐにまた直人の声に繋がる。
【なんかあった?今場所移ったからゆっくり話せ。】
「うん。ごめんね。」
【構わねぇよ。いつでもいいって言ったの俺だし。…元気ない?なんかあったのか?】
声色一つで私の現状を把握できるのは世界でただ一人、この人だけだと思う。自分でも馬鹿なことしてるって分かってる、だけど…―――
「ごめんなさい。あの私…直人さんに謝らなきゃで、」
【…八木との未来が見えちゃった?…正解?】
ほらね、私が言葉にできない言葉をいとも簡単に当ててしまう。泣くな、ここで。そう思えば思う程喉の奥が詰まって目尻が熱く滲んでくる。
「…ごめん、なさい。」
精一杯強がってそう言うけど、電話の向こうで直人が小さく笑ったのが聞こえた。
【はは、そっかそっか、まぁそうだよな。2年も放ったらかしにしてた奴のこと、今更戻ってきたからって無理だよな。】
「違う、違うの直人さん。直人さんのいない2年間、死ぬほど寂しくて辛くて悲しくて、どうしようもなかった。でもね、勇征は直人さんの代わりとかじゃなくて、ただ純粋に好きになったの。ごめんね直人さん。直人さんがロスに戻るってなって寂しいって思ったそれがやっぱり直人さんを愛してたんだって思った。だけど違った。直人さんのいない日本よりも、勇征が隣にいない事の方がずっとずっと苦しいの。私、勇征を愛してる。もう直人さんの所には戻れない。」
はぁーって溜息を零す直人にポロリと涙が零れた。
【分かった。雪乃の気持ちはしっかり受け止める。話してくれてありがとうな。ちゃんと八木にも伝えてやれ。大丈夫心配すんな。雪乃の事はどんな形でも好きだよ。】
「直人さん、ごめんなさい。それから、ありがとう。」
【ずっと迷わせてて悪かったな。】
「うううん。本当に今までありがとう。」
【幸せになれよ、雪乃。】
「はい。」
ツーツーツーツー…
冷たい機械音と流れる涙。直人と出逢って恋した日々は忘れることのできない宝物。
でもそれ以上に大事な宝物を見つけたよ。
もう迷わない、もう間違えない。
ゆせに繋がる幸せへの道が私にはハッキリと見えたから。