地元の駅に降り立った。ふぅー。今日は色々だったな…。ここから家までの道のりも何度となく直人と2人、手を繋いで歩いた。いつだって私の歩幅に合わせてくれた直人。2人でたわいない話をしながら家までを歩いたのがもう二年も前のこと。
心の中は今も変わらず直人しかいないのに。
「保科さん!」
え?呼ばれた?立ち止まらずに振り返ると、駅の改札出てすぐにある壁の前、ゆせが背をつけて立っていた。
「ストーカー!?」
「いや違います。ちゃんと聞きました、立花さんに。」
「へ?ネコに?」
「はい。家まで送ります。」
…な、なんだ?黒い薄手のコートを羽織ったゆせが私の隣に並ぶ。直人より遥かに背の高いゆせに苦笑い。
でも、―――――「ゆせ?」名前を呼ぶと「ん?」ってアヒル口でこちらを見下ろす。アヒル口は哲也先輩で見慣れているけれど、ゆせのがちょっとあざとく見える。
「あの、どういうつもり?」
「え?どういうって?」
「なんで私に構うのよ、」
「え、気になってるから。迷惑ですか?」
なにこいつ!どの口が気になってるって発信してるわけ?
「や、私さっき泣いたんだよ。」
直人を想って、直人に逢いたくて、
「はい。知ってます。」
…最近の若者の考えてる事は分からない。立ち止まってゆせが握った手を離すと当たり前に視線は飛んできて。
「ないから!ゆせが入る隙なんて1ミリもないから!私は直人さんを愛してる!!」
言い切ってくるりとゆせに背を向けて1人、歩き出す。だけどすぐに後ろからゆせの温もりに包まれて。ふわりと抱きしめるゆせに足が止まる。
「だからそうやって強がる必要ないって思ってます。1人で寂しくて泣くぐらいなら俺の事使ってください。人の温もりって少なからず安心できるんですよ?ね?」
「………、」
「直人さんの代わりでもいいから、傍にいさせてください。」
直人以外に恋した記憶なんてさらさらないから、直人以外の男の対処法なんて何一つ分からなくて。だけど不思議とこの温もりは嫌じゃなかった。さっき思いっきり泣かせて貰ったからかもしれないけど。
「代わりなんて、」
「簡単に諦めるなら最初から追わない。僕今日雪乃さんに会えてよかった。」
ぎゅっと強く抱きしめるゆせは、ずるい年下だと思う。