まだ若いマサの運転はめちゃくちゃ荒くて、でも急いでいるから仕方がない。
さっきからネコも未来も捕まらなくて。ひたすら電話を掛けているものの2人とも一緒なのか出てくれない。
猛スピードでホテルの前にバイクを止めたマサは、迷うことなく私を連れて中に入る。
「あと1分で兄貴達来るから。」
マサの言葉に頷いて待っていると、1分も立たないうちにバイク音が聞こえてきた。
来たのは健太と夏喜だけ。
てっきり幹部総出かと思ったけどその2人だけだった。
「おばちゃん俺ら4人やねん、ええやんな?」
半ば無理やり4人で一部屋を取って狭いエレベーターで嘉くんの部屋のある階まで行って呼び鈴を鳴らす。
でもシーンとして出てこなくて。
健太がドアノブを掴むとそれをくるりと回した。
「開いてる。夏喜、ねぇねの傍についてろ。」
「はい。」
「マサ、着いてこい。」
「分かってる。」
長身のなっちゃんに背中を入れられて部屋の中がよく見えなくなった。
「おいっ、嘉!おいっ、しっかりしろ!」
聞こえる健太の声になっちゃんの腕をギュッと握る。
「ゆき乃さんは見ない方がいい。」
くるりと反転して私を抱きしめるから何も見えなくなった。
でも、
「ゆき乃っ!ゆき乃っ!」
嘉くんに名前を呼ばれてなっちゃんの腕からもがき出た。
ベッドの上、全裸の嘉くんがトロンとした目でこっちを見ていた。
「あ、なっちゃん離して、」
「ダメだ、ゆき乃さん!」
「や、嘉くんっ!!嘉くんっ!!」
どんな姿であろうと、私を求めて手を差し伸べてくれる嘉くんを見放しになんてとてもじゃないけどできない。
「夏喜、捕まえとけやっ!」
健太の怒鳴り声なんて今はどーでもいい。目の前の嘉くんをギュッと抱きしめた。
「馬鹿よ嘉くん。こんなになって…私が助けてあげるから、安心して。」
「ゆき乃、ゆき乃…本当はゆき乃の告白めちゃくちゃ嬉しかったんだ俺。だからさち子と別れようと思ったけど、錠剤飲まされてから…身体が熱くてたまんない。助けてゆき乃、俺を一人にしないで、」
振り返って健太を見る。
「どーしたらいいの?薬、どーやって抜くの?やましょーはどうしてたの!?」
私の問いかけに健太は1つ息を吐き出した。
「簡単な話だ。胃の中身全部吐かせんだよ、」
嘉くんを掴んでお風呂場に連れていくとシャワーをジャージャー出す。
涙目の嘉くんの口をあけてそこに指を突っ込んだ。