「へぇ。ここまでたどり着けたんだ。感心感心。」
手にはナイフを持っていて、それだけで身体が震えそう。
そんなもの早々見かけない。
「あんたがやましょーを潰したんでしょ?」
「知らないわよ。勝手に惚れて勝手に薬漬けになって、勝手に消えたんでしょ。」
冷たい声に反吐が出る。
「何のためにこんな事するのよ。うちのチームに手出して。朝海のこと、こんなにして。何のために、」
カツンとヒールを鳴らしてネコの肩に手をかけた女は、次の瞬間ネコの髪の毛をグイッと引っ張りあげてナイフを頬に当てた。
「何のために?そんなの簡単。神谷健太を苦しめたいだけ。あの男の大事なものは全部奪ってやろーと思って。それだけの事。そんなに騒がれてこっちが迷惑してるんだよね。」
は?思わず声に出そうになるのを飲み込んだ。
「健太が何かしたの?健太に恨みでも?」
「大あり!たまたまクラブで会ったから声かけてあげたの、この私が。それなのにあの男、全くこっちを見向きもしなかった。」
爪をガリガリ噛んで眉間にシワを寄せたアイリ。
「…それだけ?そんなくだらない事で、こんな事するの?」
「くだらないっ!?…私はね、男に困ったことなんて一度もないの。みんな私の事を好きになって夢中になる。もちろん、未来も。それなのに神谷健太だけはそんな素振りも見せないで、あの日私に言ったのよ、――――朝海以上の女はこの世にいねぇ。悪いな。――――許せなかった。この私をコケにして。」
プライドズタズタって感じ、アイリがネコを睨みつけている。
「…笑える。くだらない。当たり前でしょ、あんたが朝海に勝てっこない!!人に本気で愛されてる女はね、誰より強くて誰より優しくて、誰より綺麗なんだよっ!!!そんな軽い気持ちしか持たないあんなが朝海に勝てるわけないわよっ!!!!」
「黙れ!!!!」
グサッとネコの腕にナイフを差し込むアイリに「止めてっ!!!!」飛びかかった。
悲鳴をあげるネコの左腕から血がポタポタと垂れ落ちる。
でもすぐに血のついたナイフを私に向けた。
「私はいつ死んでもいいって覚悟でやってんだ。邪魔する奴は全員消す。神谷ゆき乃、あんたも、あんたの大事な加納も苦しめてあげるよ。」
「…なんで、嘉くんのこと、」
「分かるよ、見てりゃ。あんたが加納の事見てるのぐらい。…」
…何かが引っ掛かる。