episode 35


【side YOSHIYUKI】


…俺このまま死ぬのかな。

薄れゆく景色の中でそんな事を思った。

錠剤を口に含んださち子が、ベッドの上、キスをしながらそれを俺の口に入れた。「飲み込んで、美味しいから。」なんて口車にのせられて飲み込んだ俺はその後すぐに身体が熱くなって夢中で求めたんだ。

でもさち子に掛かってきた一本の電話。俺から簡単に離れてその電話に出たさち子に違和感を覚えた。

ゆき乃ならこんな事しない…無意識でそんな風に思っていて。

服を着始めたさち子の腕を掴んで「どこ行くの?」小さく聞いた。

俺を上から下まで凝視したさち子は面倒そうに俺に言い放った。


「あんたには関係ない。気安く触んないでよねっ。もう用無し、あんた。あの女…朝海が捕まったからもういいって。」


あの女?朝海?なんのこと?用無しなの?俺。


「さち子?意味がよく分からない。」
「だから触んないでっ!!あたし夏喜くんが好きなの。最初からあんたなんて興味なかった。」


…頭がボーッとして視界がちょっと狭くて。


「そっか。じゃあ俺、ゆき乃のとこ行く。いいよね?」


無意識だった。薬を飲まされたからなのか、自分の感情が無意識で飛び出す。


「は?何言ってんの?」
「ずっとゆき乃の気持ちに答えたかった。ゆき乃はいつだって優しくて可愛くて、こんな俺の事本気で好きって言ってくれた。…さち子は俺の事なんて好きじゃないよね?なら俺、今からゆき乃のとこ行くわ。」


目を丸くして俺を見るさち子は、チッと大きく舌打ちをするとまたあの錠剤を口に含んだ。

そのままゆっくりこちらに歩いてきて「あんたは誰にも渡さない!永遠にあたしの奴隷よ。」そう言うと、自由のきかない俺の両頬に手を添えて強引に唇を重ねた―――


気づくとさち子はいなくて。俺は感情のまま、ゆき乃に電話をかけた。

今自分がどういう状況なのか、なにも分からずに。

電話で何を言ったか今はもう思い出せない。

だけどゆき乃はすぐに駆けつけてくれて、まっさらな俺を抱きしめてくれた。

でもすぐに健太くんに抱えられて風呂場で何度も吐かされた。

もう嫌だ!って言う俺を一瞥してシャワーの水を胃に入れられる。数秒後に指を突っ込まれて嘔吐。

苦しくて喉が痛くて涙も止まんなくて、それでも何度もそうされて俺は最後は意識を失った。

薄れる意識の中で、死ぬんだろうか…という疑問を抱えたまま…目を閉じた。