【side ゆき乃】
薬の抜けた嘉くんは、彼女だったさち子に別れ話をしようと電話をかけたら、どうやら着拒されてるらしく、LINEもブロックされていて、呆気なく終わりを迎えた。
「馬鹿だよね、俺。ほんとに。」
わざわざ私に報告に来てくれた嘉くんに抱きついて分厚い胸板に顔を埋める。自分がこんなに甘えたな性格だなんて知らなかった。
いつも長女だからしっかりしなきゃって生きてきた。
「ゆき乃…。好きだよ。俺と付き合って欲しい。」
「はい!喜んで!」
この人の前でだけは、可愛いオンナになれるんだと。
「今日はマサの帰りが遅いから、泊まってって?ね?」
「…うん、でも俺、」
ほんのり俯く嘉くん。だからその色白の頬に手を添えて見つめあげる。
「怖い?私とするの。」
あんな事があった後だからもしかしたら怖いんじゃないかって。だけど嘉くんは八重歯を見せて笑うと「違うよ。」って。
「我慢できなくなってもいいの?って、そう聞こうとした。」
全身で愛を感じる。
やっと手に入る。
「そんなの、私のが我慢できない!」
ギュッと抱きついてそのままベッドに押し倒した。
ドサッと背中で私を受け止める嘉くんの上、ゆっくり近づくと肘をついて嘉くんも近づいてくれて、
「好きだよ、ゆき乃。」
甘い言葉と柔らかな温もりに包まれた。
背中に回された腕に力が込められて、嘉くんがクルリと反転して私を組み伏せた。
伸びた前髪がサラリと頬を掠めたと思ったら首に舌を絡ませるから腰が浮きそうになった。
見上げた嘉くんは、見たことのない高揚した顔で、私を愛し続けてくれたんだ。