「かみけんくんがすき!かみけんくんがいい!」
子供みたいにダレてそう言うネコをちょっと可愛いなんて思ってしまう。それだけ素直に自分の気持ちが見えてるならもっとちゃんと黎弥に伝えればいいのに、なぁんて。
そこでふと思い出したんだ、樹の話を。
「あっ!!」
声をあげた私に当たり前に視線を移すなっちゃんとネコ。これは、言うべきだろうか?
ここまで声を上げてしまったから、視線はまだ2人と絡んでいる。若干の苦笑いののち、私はパルメザンチーズを置いてフォークにパスタを一巻するとそれを口に含んだ。
味わってよく噛んでゴックン、飲み込んでからネコに視線を向ける。
「樹に聞いたんだけど。どうやらかみけんと元カノが別れた理由は…いつぞかのお祭りでネコを見かけたかみけんが、それ以来ずっとネコ可愛いって言いまくってたとかで。さすがに彼女も怒って喧嘩別れ…したみたい。」
聞いてる最中にもどんどんネコの表情は明るさを増していって、言い終えた私の前、頬を紅らめて嬉しそうに笑うネコが「ほんとっ!?ほんとっ!?」椅子に座ったまま今にもぴょんぴょんとジャンプしそうなくらいに舞い上がっている。
「尚更黎弥くんと別れないと可哀想だぞ、ネコ。舞い上がるのはそれからにしろよ?」
冷静ななっちゃんにピシャリと言われてネコはまたうーって低い声をあげた。
「俺も、女作ろうかなあ…」
椅子の背もたれに寄りかかって大股開いてるなっちゃんは、手を後頭部で交差して上を向く。
なっちゃんならすぐできるよ!って思うけど。
ネコも私も恋愛しているけれど、そういえばなっちゃんからその手の話を聞いたことは一度もない。ただの一度も。
「なっちゃんアーン。」
ボロネーゼを巻き付けたフォークを口元に運ぶとそれをなんなくパクつくなっちゃん。モグモグと噛んで飲み込んだ後、チラリと視線が絡む。
「で。ゆき乃さんは?樹とどうなの?」
冷めた目で私を捉えたなっちゃんにドキリと胸が脈打った。これは、拷問か?
フォークを置いてそば茶をゴクリと飲むと私は小さく頷く。
「うん、付き合ってる。」
散々恋バナをしてきた2人だけれど、何故かちょっと照れくさい。なんていうか、ちゃんと付き合ってるって言えるからなのだろうか。
今までの恋愛はそう、私の独りよがりみたいなもんだったから。
「そ。よかったね!」
ふわりと笑うなっちゃんに、私も笑い返した。
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