拾陸 風邪っぴき


お昼休みを終えてトイレで歯磨きをして軽く化粧を直す。鏡に映った自分を見て小さく溜息。

髪の毛ボロボロ。美容院行かなきゃ。ネイルもだいぶあがってきたからやり直して貰って。…諸々出費が多いなぁと思うものの、女にとってのお洒落は早々止められない。

好きな男がいるなら尚更常に綺麗でありたいと思う。

とりあえずスマホのホットペッパーアプリを開いて木曜の午後、美容院の予約を入れた。

会社には午後休届けを出して。





迎えた木曜日。

始業前にいつものCafeに顔を出すと珍しくなっちゃんが項垂れていた。

ネコはまだ来ていないのかCafe内に姿はない。


「なっちゃんおはよ!」


ポンと背中をたたくとビクッとなっちゃんが肩を震わせた。いや、そんなに吃驚しなくても…そう思いながらもホットミルクを置いて隣に座る。

ちなみに朝は窓側のカウンターに座るのがお約束。

チラリとこちらを見たものの、ちょっと虚ろな目で苦笑い。


「ゆき乃さん、頭痛薬ある?」


ケホッと空咳をするなっちゃん。もしかして熱ある?

覗き込んでおデコに手を当てると結構熱い。

偏頭痛持ちの私はそりゃ確かに常備しているけれど、これは抗生物質飲まなきゃ下がらないんじゃないかなぁ…って思うわけで。

でも頑固ななっちゃんにそれが通用するかどうか。


「あるけど、病院行ったら?」

「とりあえず飲まして。」



あーんて口を開けるから、私はなっちゃんの背中をポンと叩いて立ち上がると、自販機で水を買って戻った。

鞄から出したイヴをなっちゃんの口に入れてペットボトルを渡すとそれをごくごく飲み干す。


「だりぃ。」


クソッて思うように動けない身体を起こしてなっちゃんは頭を振った。


「病院行くなら着いてくから行ってね。」

「うん。」


始業ギリギリまでネコを待っていたけど結局この時間までに出社して来なかったんだ。
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