お昼前になってデスクの内線が鳴り響いた。
ネコからはLINEに一言、【今日休むー!】って言葉と意味深なスタンプ。…さてはかみけんといるのか。
「もしもし。」
【ゆき乃さん、助けて、】
聞こえた声はなっちゃんで。ネコやなっちゃんとのやり取りは基本LINEで、内線なんてほとんど使ったことがない。だからその声色に焦ったのは言うまでもなかった。
すぐ様私は受話器を置いてなっちゃんのいる人事部へ走った。この前は躊躇していたその入口のドアをガラリと開けると、なっちゃんを囲むようにみんながそこにいて。
私を見るなりなっちゃんへと続く道がサーっと開いたんだ。
「なっちゃん!もう、あれ程無理するなって言ったのに。」
「病院連れてってぇ、ゆき乃さん。」
熱のせいか赤い顔と潤んだ瞳のなっちゃんが私に手を差し出していて、だからそれを握るとなっちゃんが安心したようにそっと目を閉じた。
タクシーを呼んで病院に直行。
この為に午後休取っていたわけじゃないけど、こんな弱ったなっちゃんをほおっておくなんてできやしない。
「ゆき乃っ!!なにしてんの、」
タクシーに乗る寸前樹が私を追いかけて来たのを思い浮かべる。誤解、されてないよね?なっちゃんの具合が悪かったのはみんな部署の人も分かってるし。
さほど気にする事もなく、私はなっちゃんの隣に乗り込んだ。
コテって私の肩に寄りかかって震えるなっちゃんがキュっと手を握ったからそのまま握り返した。
「なっちゃん寒い?もう少し頑張れる?」
「うん。」
「気分悪かったりしたら言ってね?」
「んー。」
喋るのも億劫そうななっちゃんは、寒くてブルブル震えているのに、冷や汗なのかなんなのか、汗をかいている。そうとう熱があがっているんだって。
私はなっちゃんの身体を摩るように撫でるとほんのり口端を緩めた。
◆
「風邪ですね。」
熱が高いからって2時間ほど点滴を受けたなっちゃんをまたタクシーで送る。
そのまま薬を飲ませる為になっちゃんの部屋にあがってお粥を作ろうと冷蔵庫を開けるも水とビールしか入っていない。
とりあえずベッドに寝かせて氷水で濡らしたタオルをおデコと脇の下に入れると荒い呼吸でなっちゃんが「あちぃ…」って呟いた。
点滴で多少の怠さは抜けたようだけれど、まだこれから熱があがるからって熱冷ましの薬を飲ませなきゃだ。
寝ているのをいい事に、私は鍵と財布とスマホを手になっちゃんのマンションから出た。
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