【side 樹】
ゆき乃に一方的に電話を切られてクソッと舌打ちをしたものの、イライラが全くおさまらない。
つい物に当たりたくなる衝動を理性で抑えつけた。
それでも肩があがるぐらいの大きな呼吸を繰り返して冷静に…と心の中で唱えると、少しだけ落ち着いてきた。
壁に寄りかかって盛大な溜息。
ゆき乃の言った言葉が脳内をこだまする…
言ってること分かんないなんて、言われたことねぇし!
あークソッ、ムシャクシャする!!!
ポケットに入っている煙草片手に社内に設置された喫煙スペースまで大股で歩くと、ガラス張りのドアを開けて中に入ったそこで乱雑に箱から煙草を取り出して火をつける。
煙を肺に吸い入れて、ようやくいつもの落ち着きを取り戻したんだ。
中にある自販で珈琲を買って一口飲むと更に落ち着いた。
けど現状は何も変わんねぇ。ゆき乃が夏喜の家にいる事は変わらないし、止められなかった。
夏喜は絶対に好きだと言わないけど、ゆき乃の傍にいる事は明らかで、そこに例え今はなかったとしても、存在しているのかも分からない恋の炎がいつ燃え上がるかなんて誰にも分からない。
男女の友情は、成り立たないと思っている。
俺を友達として見る女に出会ってないからだ。
でもイコールそういう事であって。
あの二人に流れている友情の空気が、たった一瞬で恋の空気に変わるんじゃないかって、そんな事ばかりが頭を洗脳して壊れそうだ。
「はぁ…。」
ついに口から盛れた溜息。
ふと視線をあげるとこの場所に似つかわしくないテンションで大樹さんが入ってきた。
「おお、いっちゃん!!なんだよシケたツラしてー!」
ポンッと肩を組まれて苦笑い。
大樹さんもポケットから煙草を取り出して咥えると、そこに火をつけた。
「なに?兄貴が聞いてやるよ、悩み多き樹くんよ!」
…若干の諦めと共に「いや、いいっす。」そう言うも大樹さんはわりとしつこい奴だと知っている。
あえて大樹さんから目線を逸らしたのににゅいって俺の視界に入り込んで言うんだ。
「姐さんに聞いたぞ。付き合ってるって。」
実に真剣な顔で言い放った。
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