弐拾壱 身も心も


まぁいいけど、大樹さんなら。俺は煙草の煙を大樹さんにかからないように反対側に吐き出す。


「付き合ってます、マジで。」


大樹さんは無言で自販の方に歩くと俺と同じ珈琲を買ってまた戻って来た。さっきまでのテンションないけど、なんだぁ?

じぃっと大樹さんを見ている俺に俯いていた顔を上げた。


「なんで姐さんなの?いっちゃんってほら、単純にモテるじゃん?」


俺たちが不似合いだとでもいいたいんだろうか?なんで?なんて…―――思い浮かべるだけで身体が熱くなるような気分だ。

俺は煙草を数回吸い込むとまた珈琲で喉を潤した。


「やっぱり、セックス?」


口を開こうとした俺にそんな言葉を投げる大樹さん。まさか大樹さんの口からセックスなんて出てくると思ってもなく、思わず「え、」マヌケっ面で素っ頓狂な声が盛れた。

そういやこの人は唯一ゆき乃の過去をよく知る人、だったっけ?姐さん…なんて呼んでるのも気になるし。


「なんか知ってるんすか?」

「え?あ、いや。」


なんとなく気まずそうな言いずらそうな雰囲気に俺は引くことなくじっと大樹さんを見つめる。

あえて外した視線を合わせようとしない大樹さん。この人のこんな態度は初めてだった。

いつだって自信に満ち溢れているような印象だけれど、こんな時もあるんだなぁなんて軽く思った。

まぁ言いたくなきゃ無理やりには聞かないけど、ゆき乃の事は多少なりとも気になるわけで。


「確かにゆき乃とそうなって半分以上…いや八割ぐらい心奪われました。半端ないですあの人のテク。あの快感覚えちゃったら他の女なんて目に入らないですよ。でもだからってそれだけじゃないし。元々気になってはいました、ゆき乃のこと。だから夏喜にそれとなく繋いで欲しいって言ってみたりもしましたけど、全部スルーされて。したら黎弥くんからチャンスだぞ!って言われてすっ飛んで行ったんです。」


今じゃ身も心もゆき乃以外考えられねぇ。だから夏喜の事も不安でしかない。馬鹿みたいに不安なんだよ。


「誰にも渡すつもりないですから。」


何か言いたげなのに何も言ってこない大樹さんにそう告げて俺は喫煙ルームを後にした。


さて、どーするかな…。

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