弐拾弐 甘夏


【side ゆき乃】


買い物を終えてなっちゃんのマンションに戻った。ベッドの上のなっちゃんは汗だくで、これは着替えさせなきゃまずいなぁ。

とりあえず汗ふくためにタオルとぬるま湯を洗面所から持ってきた桶に入れてベッドの下に置く。


「着替え、着替え。なっちゃんごめん、勝手に開けるよクローゼット!」


一応の声掛けと共に黒扉のクローゼットを開けた。思いの外きっちりと収納してあって。何個かある箱の一つに下着を発見。それを適当に取り出して他の箱も開けると丁寧に畳んでTシャツが入っていた。


「性格出るなぁ。」


ほんのり口端を緩めてジャージを見つけるとそれをまた手にしてクローゼットを閉める。

ベッドの上、苦しそうに口を開けて寝ているなっちゃんの額に手を当てると燃えるように熱くて…汗でジメッとした首元に手を当てるとほんのり目を見開いたんだ。


「ゆき乃さん?」

「うん。大丈夫だよ、熱下がるまで傍にいるから。」


汗でペタッとした前髪を後ろに送ってそう言うとなっちゃんは涙目をこちらに向ける。

なにか言いたげな瞳は無言で目を逸らす。


「なっちゃん?どうかした?」


私の問に小さく首を横に振った。でもすぐに寝息が聞こえて…ものの数秒前まで起きてたのに!?


「ゆっくりやすんでね。」


頬を撫でるとなっちゃんの呼吸が大きくなった。

無意識で反応してるの?なんて思うとちょっと可愛くて。


「着替えさせるから大人しくしててね。」


耳元でそう言って私はなっちゃんの全身をタオルで拭きつつ着替えさせるのだった。






ネコみたいにあんまり料理得意じゃない…と思いながらも私はレシピアプリでお粥を検索して作り始める。

お粥が飽きたら…と思ってうどんも買ってきた。子供の頃は風邪をひくと母がよくうどんを作ってくれたなぁなんて懐かしんで。

それから冷たいゼリーやカットフルーツ。

食欲がなくとも、これぐらいなら食べられるかなぁって。

グツグツと鍋の中で煮だつ米を見ていると、ガタンって音がした。振り返るとなっちゃんがベッドからムクリと起き上がっていて。


「なっちゃん?どうしたの?」

「トイレ。手かして。」


座ったままこちらに手を伸ばすなっちゃんに、お鍋の火を止めて歩いていく。


「今日は甘夏だね。」


ふわりと髪の毛を撫でるとなっちゃんは上目遣いで私を見ていて、なぜかそっと手を腰に巻き付けた――――

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