弐拾肆 更に甘夏


「見て双子」


振り返りざまに言った言葉が止まる。ド至近距離で目が合って、あと数秒の所でスッと顔を逸らした。

あまりになっちゃんの目が真剣でちょっとだけ心臓がトクンと脈打ったなんて。

それでもなっちゃんはまた、何事も無かったかのように私の肩に顎をかけて「ほんとだ、双子。」シレっとそう言うから、腕を伸ばしてコツっとなっちゃんの背中を叩く。


「こら、動くなって言ったでしょ。」

「動いたのゆき乃さんでしょ。」


言われて考えたらまぁそうかって。そうなんだけど、さすがに仲がいいと言えど、この体制はどうなの?

さっきまで私自身なんとも思っていなかったくせに、ほんの一瞬なっちゃんと触れ合いそうになっただけで心の奥がモヤっとしているのだろうか。

なっちゃんは肝心なところは何もしないで、それを何事も無かったかのようにシレッとしているけど、私やネコ以外の女には通用しないと思う。

これが単なるなっちゃんを好きでもない女相手だったとしても、落ちるよね。


「食べられる?」

「うん、食う。」

「じゃあ座ってて。――それとも、ベッドの上で食べさせてあげようか?」


なっちゃんを見ずにテーブルを指差す。

わざとだった。わざとそう言ったの。ちょっとだけ照れたから。それを隠すようにわざとはぐらかした。

だけどなっちゃんはほんの数秒キョトンとしてたけど、ニッて口端を緩めると無言でベッドの方へ移動したんだ。

もしかして、本気でとったの?

…まぁ、いいけど。なんか今日は調子が狂う…なんて少々思いながらも私は火を止めてお粥を茶碗によそった。

大人しくベッドの上で待っているなっちゃんの元へそれを持って行った。


「ちゃんと薬飲むのよ?」


病院で貰った錠剤をテーブルに置くとちょっと顔をしかめる。

大きめのスプーンに乗せた粥にフーって息を吹きかけて覚ますとそれをなっちゃんの口に入れた。


「どうかな?」

「うまいよ、ゆき乃さん。ありがとう。」


なっちゃんの言葉に私は嬉しくなってお粥を全部食べさせて上げたんだ。
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