弐拾捌 黎弥のSOS


「じゃあなっちゃんをお願いね?」


タッパーを沢山持たせたネコになっちゃんを託して漸く私はスマホを取り出す。

本当は私がなっちゃんとこに持っていくつもりだったけれど、やっぱり樹が気になって。

あんな風に電話を終えてしまったから、今夜はネコにお願いしたらあっさり承諾してくれた。

ふぅ、と一息ついてLINEの着信を押すと数コールで慌てたようなガサガサって音がした。


「樹?ごめんね、電話もメッセージも返信できなくて。」


怒ってる?拗ねてる?もういいって呆れてる?

ドキドキしながら樹の返事を待つ私に何故か聞こえたのは「あれ?ゆき乃さん?」…樹じゃない声。

どっかで聞いた事あるけど、「黎弥です!」…これはあれか?ネコの問題を解決しろって事だろうか?


「ちょうど良かった、今から合流してもいい?」

【樹トイレ行ってて。俺もゆき乃さんに相談したいことあって、待ってます。】


あながちネコのことだろうって。

大きく息を吐き出すと、私は樹と黎弥のいる居酒屋へと移動したんだ。





「ゆき乃!こっち!」


相変わらず爽やかな笑顔で私を呼び寄せる樹。

個室の中でぐだーってテーブルに寝そべっている黎弥に苦笑い。

樹が私の手を引いて自分の横に座らせると遠慮がちに「さっきはごめんね。」…小さく呟いた。

一方的に電話を切ったのは私の方なのに、自分から謝ってくれるなんて。

こんな男、今までいなかったんじゃないだろうか?


「私こそ、ごめんね?」

「いや、いい。俺が男として小さかったから!ゆき乃は悪くねぇよ。」

甘えるように頬を擦り付けて来る樹の前、黎弥が据わった目で「イチャイチャすんなー2人ともぉ!!!」…既に酔い潰れそうな気がするけど。


「黎弥くんずっとこうなの。ネコネコうるせぇの、なんの。」


樹が黎弥の手中にあるハイボールを取って水に変える。

こんなに潰れる程、ネコが好きな黎弥の応援をしたくなるのは気のせいだろうか。

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