「理性が…ごめん、シャワー浴びる?」
ちょっとだけ困ったように眉毛を下げる樹にギュッと抱きついて「一緒に浴びる?」なんて言うと真っ赤な顔でこっちを見る。
「え、あの、まじ?」
口をパクパクさせているから「冗談よ!先に浴びてきていいよ!」背中を押すと苦笑いで鞄を置きに寝室へ入った。
だけど次の瞬間、チャリンって鈴の音がして、振り返るとふわふわな毛を纏った猫が樹と共に出てきた。
「わー!可愛い!!!こんばんは、ゆき乃です。」
しゃがんで手を伸ばすと意外にも逃げずに背中を撫でさせてくれる。
既にでれっでれな樹に「飼ってたの?」そう聞くと満面の笑みで「うん。猫好き?」ふわりと撫でて抱っこをした。
「好き!断然猫派!」
パァーっと表情を明るくした樹。
「でも猫アレルギーなの。だから今度から薬飲んで来るね!」
「マジか!マース、ゆき乃と仲良くしてな。」
「マース?」
樹を見るとコクッて頷く。樹に抱っこされているマースを見てニッコリ微笑む。
「よろしくね、マース!」
にゃあーって鳴いてくれたのは、樹がマースの首を指でクイクイ撫でているからだと思うけれど、タイミングがよかったから私に言ってくれたものだと思っておこうって。
「なんか、ここに住みたくなっちゃうなぁ。」
何気なく口を継いで出た言葉だったけれど、樹はキョトンとした次の瞬間、マース片手に私を抱き寄せる。
「住みたい、ここで。ゆき乃と。本気で考えといて欲しい。」
今までそんな事を言ってくれた男はいなかった。
まだ樹は若いけれど、その先を見ていると思ってもいいのだろうか?
そういう意味も込めて、一緒に住もう!と言ってくれたんだと思ってもいいのだろうか?
これは、ネコとなっちゃんに報告しなきゃだ!なんて意気込んでいたら、無言の私に不安になったのか樹が「ゆき乃?」小さく私を呼んだ。
「あ、ごめん。うん、考える。すごく嬉しい!」
「よかった。」
微笑んだ樹はそのまま手を頬に添えてほんのり屈んで私にキスをした。
唇を離してもまたすぐに触れる樹に、マースを抱く手が緩んだのか、腕の中で暴れるマース。
白い尻尾が私の首元を掠めると、数分後に蕁麻疹が出るなんて。
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