【side ゆき乃】
米を茹でるグツグツって音に混ざってギシッて音がした。
結構古いアパートだからキッチンの床が軋むってなっちゃん言ってて、だからなっちゃんが水でも飲むのかな?って振り返ったら、途中ですぐ真後ろになっちゃんの気配があって…
あろうことか、なっちゃんの腕が肩に触れて後頭部に回されたのは私の頭を固定するからだって。
目をパチクリと瞬きを5回繰り返したらなっちゃんの顔がゆっくりと離れた。
「なっちゃん?どうした、」
の?
そう言い終わる前に再び塞がれた唇。
トクン…トクン…と高鳴る鼓動…
引くぐらい力強く私の身体に巻きついているなっちゃん。
頬に添える手はすごく優しくて熱くて、目を閉じたらドクドクと自分の心臓がうごめいているのが分かった。
キスされてるって分かるけど、相手がなっちゃんだってそれも分かってるけど、どうしたらいいのかなんて分からなくて。
受け入れちゃダメだって思う反面、なっちゃんのこんな姿は見もので、や、そうじゃなくて。
風邪で熱があがって理性が崩壊しちゃった?
そもそも理性崩壊で私にキスする?
違う、魔が差した!
そうだ、それだ!
これはキスじゃない。そう、キスじゃない!!
「なっちゃん、」
「今だけ、」
掠れた甘い声が耳に届く。
今だけ…そう言ったような気がして、薄目でなっちゃんを見るとしっかり目を閉じてキスをしていた。
それがちょっと可愛くて思わず口内に入り込んでいたなっちゃんの舌を絡めとった。
それがスイッチになったのか、なっちゃんの腕が私の背中に回る。
よく分からない感情のまま、「今だけ、」そう言うなっちゃんのキスを受け入れたんだ。
「ンッ、」
盛れた声はなっちゃんの方だった。
舌を絡めつつ唇を甘噛みすると、何度かなっちゃんが甘い声を漏らした。
それすらちょっと可愛い…なんて思う私は、樹の彼女失格だ。
だけど今、そんな事を考える余裕がなかった。
それくらい、なっちゃんとのこのキスに夢中だったんだ――――
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