参拾玖 お泊まりの約束


「はぁー。」



なんだかなぁ。

重苦しい空気のお昼休憩を終えて会議資料をコピーしようとコピー室へ向かっている時だった。

社内にある喫煙スペースで仲良く煙草を吸う樹とかみけん。

特に営業部を覗いたわけではないけど、樹は朝は直行だって言ってたから戻って来てたんだ、なんて思ってコンコン…軽く透明硝子を叩いた。

ポケットに片手突っ込んで煙草を咥えた樹が振り返ると煙草を置いて外に出て来た。



「ゆき乃!」

「戻ってたんだ!」

「うん今ね。一服してから健太さんと飯行こうかって。ゆき乃は?もう食っちゃったよね?」

「あーうん、もう。あ、でも明日から一緒に食べたい!ダメかな?」

「ダメじゃないよ。食お!嬉しい。…今日早く上がれそうなんだけど、飯行かない?」



私の腕を握ると着いていた腕時計を見て「6時に上がる!」返事なんて聞いてないのにそう言ってきて。

そんな樹がすこぶる可愛んだ。



「うん!…夜も泊まっていい?」



クシャっと私の髪を撫でて「その質問、答えいっこしかないだろ!」ニッて笑う樹にここに誰もいなかったら抱きつきたいー!って思ったなんて。



「えーいいなー。俺も連れてってよ、樹!」



だけれど、不意にそんな声と同時かみけんが喫煙室から顔を出した。



「え?あー…と、」



かみけんに背を向けて私の顔を覗き込む樹に、苦笑いしつつコクッと頷く。

だけど私よりもっと嫌そうな顔をする樹は迷ってるようで。

怪しむ視線をかみけんに向ける。

私の肩に手を乗せたまま。



「え、健太さん口説くわけじゃないですよね?ゆき乃のこと。」

「樹がダメ!って言うならね。今日は女の子とご飯食べたい気分じゃなくて。」



いや、さり気なくディスってるんだけど、かみけん。

まぁ私を女と認識していないのはよかったけど。

かみけんに、ネコのことどう思ってるのか聞きたいのは事実で。

渋る樹の横から「いいわよ!」そう言うと樹がどっと大きな溜息をついたんだ。

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