肆拾壱 ムードメーカー


【side ネコ】


「だ、誰も掴まんない!なんでぇ!!」


LINEを見て小さく溜息を着く。

ゆき乃先輩もなっちゃんも絶対おかしい。

なんか隠してる…っていうかなんかあったよ、絶対アイツら!

あたしの目を誤魔化そうったって、そうはいくか!!

とっちめて吐かせてやるつもりだったのに、見事に2人ともに逃げられた。

頼みのかみけんくんも捕まらない…てゆうか既読にならない。

できればご飯は楽しく食べたい。

独りで食べるご飯は美味しくない。

エレベーターのドアが開くと、そこには黎弥が乗っていた。


「あれ?1人?珍しくない?」

「うん。」

「もう帰るの?」

「…分かんない。」

「なんだよそれ。すげー美味い焼き鳥屋あるんだけどさ、一緒に行かない?奢るよ!」


パチンってわざとらしくウインクをする黎弥に苦笑い。

夕方から降り出した土砂降りのせいでせっかくのスカートが台無し。

パステルカラーのパンプスもこんなんじゃ泥だらけになっちゃう。

早く帰りたい気持ちはあるものの、この雨の中を歩く勇気もなく。


「割り勘なら行く。」


あたしの言葉に黎弥はニカッて白い歯を見せて「よし、決まり!」大きな黒い傘にあたしを入れてくれた。




「うんまっ!何これっ!」

「だろ!」


食え食えってあたしのお皿に焼き鳥を置いていく黎弥。


「常連なの?」

「いーや、今日で2回目!」


とても2回目には見えないのは、お店の大将と饒舌に話しているから。

まるで昔からの知り合いとか、友達みたいにペラペラ喋る黎弥は社内でもムードメーカーだった。

明るくて優しくてでも真面目で、八割は馬鹿やってるけど、ちゃんとやる時はやる男だって知っている。

だから黎弥を好きになったんだもの。


それなのに、あの時の気持ちはどこにいっちゃったんだろう?

.