「冗談がすぎます、健太さん!!!」
樹の言葉と腕に思いっきり後ろに引っ張られる。
勿論接触はしていない。
息遣いが分かる距離までいったけど、樹なら助けてくれるって思っていたし。
自分でも伏せるつもりだった。
でもネコを見た瞬間、時が止まったかのように動けなくて。
「ネコッ!!!」
階段をかけ降りて行くネコの足音と、黎弥の追いかける足音が頭の中から離れない。
慌てて立ち上がった私も黎弥の背中を追いかける。
外は土砂降りで、お店のドアを開けた所で黎弥がネコを捕まえて抱きしめていた。
「ネコ、違うのッ!!ほんとに、違うのッ!!」
黎弥に抱きしめられているネコの腕に触れるとそれを思いっきり振り払われた。
「何が違うのっ!?先輩なにやってんのっ!?藤原くんと付き合ってるんでしょっ!?それなのに何でかみけんくんと一緒にいるのっ!?なんで、あたしの前でキスなんてするのっ!?藤原くんにも、かみけんくんにも、、なっちゃんにもいい顔する先輩なんて顔も見たくないっ!!!」
雨に濡れてびしょ濡れのネコの頬にはいくつもいくつも涙が零れ落ちていて。
何も、言い返せなかった。
かみけんは違うにしても、なっちゃんの名前まで出されると思わなくて。
ネコが黎弥の腕から無理やり這い出て雨の中を走り出すと、ネコとすれ違うようにこの店にやってきたなっちゃんと大樹。
なによ、みんな揃って。
「え、どうしたの?なんでネコ泣いてるの?」
なっちゃんが私の腕を掴んで聞く。
「私のせいで。私のせいで。なっちゃん追って、ネコの事、追って!」
既に黎弥が追っているけれどなっちゃんの背中を押すと、傘を私に預けて土砂降りの中、追いかけてくれた。
病み上がりなのにごめん、なっちゃん。
ずぶ濡れの私を大樹がスーツの上着を脱いでかけてくれる。
ドアの向こう、樹の姿が見えたら堪えていた涙が零れ落ちた。
「ネコ、ごめん。」
見えないネコの後ろ姿につぶやく私は、樹の温もりに包まれて心底安心したなんて。
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