肆拾漆 紅い花


なっちゃんからの着信に気づいたのは翌朝だった。

今日は土曜日で会社も休みだからそのまま樹の部屋に泊まった。

目覚めてからスマホを見るとなっちゃんからの着信が一度だけ入っていて。

LINEのメッセージには、【ネコ捕獲した。宥めておくからゆき乃さんは心配しないで。】って。

それからおやすみってスタンプが送られてた。

ネコも黎弥も私とかみけんがキスしたって誤解してると思うから、それがなっちゃんの耳に入ることがなんとなく嫌で。

なっちゃんには軽い女だと思われたくないなんて。

ベッドの上でボーッとしていた私の隣、寝返りを打った樹が後ろからスマホを覗き込んだ。


「夏喜がいるなら大丈夫だよ、ネコさんは。」


うん、そうなんだけど。

無言でスマホを置くと樹の方に向き直った。

カーテンの隙間からは陽の光が差し込んで、電気をつけていなくてもだいぶ外は明るい。

昨日の雨はすっかりあがっているようだ。

起きて朝ご飯作らなきゃ…そう思うのに身体が動かなくて。

樹の背中に腕を回して見た目よりずっと分厚い胸筋に顔を埋めると樹の腕がTシャツの中に入り込んできた。

サラサラと背中を触る感触が心地好くてほんのり口端を緩めると、顔を覗き込むようにして樹のキスが降りてくる。

子鳥のさえずりみたいな小さなキスを何度もするからくすぐったくて、目を開けたら樹のちょっと悪戯っ子みたいな笑顔があって。


「シャツ脱がせていい?」


耳元で吐息混じりにそう呟いた樹は、私の返事を前に舌で耳の縁をなぞった。

途端に身体がそれモードになった私は耳朶を甘噛みする樹の背中に直で触れる。

手をあげてバンザイをする私に、樹は着ていたTシャツを片手で荒っぽく脱ぎ捨てると私のTシャツもスポッと抜き去った。

つわになった身体を見下ろす樹は、サラサラの髪が顔にかかってこの上なく色っぽい。

下睫毛が長くていいなーなんて思って樹を見上げる私に肘を着いて体重を載せると、迷うことなく舌を入れ込む激しいキス。

だから私も樹を足で挟んでその舌を絡ませる。

甘く声を漏らすのは決まって樹の方で。


「そのキス、誰にも知られたくねぇ。絶対俺以外の男としちゃダメだから。」

「樹と以外する予定ないよ。」

「ならよかった!」


目を細めると首筋に舌を落とす。

また今日も樹の紅い花が咲いた。

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