「なっちゃん?」
黙りこくるなっちゃんは視線を逸らしていて。
カウンターに置かれた私の手にそっとなっちゃんの手が重なった。
え、なに!?
真横のなっちゃんを見つめるとバチりと視線が絡む。
真剣な表情のせいか、こんな時に思い出しちゃいけないなっちゃんとのキスを思い出してしまって、身体中の血液が顔に集まるのが分かった。
顔が赤くなっていくのを知られたくなくて俯いた私の手を更にキュッと握り締めるなっちゃん。
いったい、どういうつもり?
「ゆき乃さん、」
ようやく口を開いたなっちゃん。
返事しなきゃなのに声が出せなくて。
手も解かないと…ってそう頭では思っていても、行動がついていかない。
なっちゃんと手を繋いで歩いた事なんて沢山あるのに、今はこんな事でも胸が大きく脈打っているなんて。
「ゆき乃…」
もう一度、呼び捨てで呼ばれて顔を上げた私はなっちゃんと見つめ合う。
「ずっと迷ってた、打ち明けるべきか。せっかく樹と幸せそうなのに、それ壊すのか?って。泣かせたくないし、困った顔もさせたくない。…――でもごめん。もう言わずにはいられない。」
なっちゃんは私から目を逸らして俯く。
ギュッと手をもう一度強く握りしめて小さくでもハッキリと言ったんだ。
「ゆき乃が好きだよ。」
トクンと胸が痛かった。
なっちゃんの出した声があまりにも切なくて。
冗談にとれないぐらい、なっちゃんの想いが伝わってきた。
「誰よりも…ゆき乃を愛してる。」
口下手ななっちゃんがそんな事言うなんて。
頭を掠める樹の顔。
あんなに優しい人を傷つけるわけにはいかない。
だけど、なっちゃんとの友情が壊れるのは以ての外…
「なっちゃんあの、」
言葉が出てこなくて。
友情だと思っていた私たちの関係は、もしかしたらずっと私だけがそう思っていたんだって。
――――男女の友情って、成り立たないのかもしれない。
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