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「…言ったんですね夏喜、姐さんに。」
この男しかいないって、大樹を呼び出した私を見た瞬間、まさかの大樹からの言葉に小さく頷いた。
こいつ、何か知ってる?
二本指を大樹に向けて差し出すと、ハッとして大樹はすぐ様スーツの内ポケットから煙草を取り出した。
それを指に挟むとジッポでカチッと火をつけた。
煙草なんて数年ぶりに吸った。
こんな物で落ち着こうなんて考え、あの頃と変わらないじゃない、最悪。
そんな自分を嫌だと思いながらも自分の過去を全部知っている男の前では見栄も張らず猫も被らずにいられるから楽だった。
そしてどんな姿であろうと私って人間を否定しないでいてくれる大樹の存在は私の中でわりとでかい。
「なっちゃんと話したの?」
返事のこない大樹を見ると、さもほわーんって書いたような顔をしていて。
思わず眉間にシワを寄せると、「やっぱ姐さんめちゃくちゃかっこいいっすね!!惚れ惚れしました。」全くカケラも嬉しくない事を言われた。
チッと舌打ちすると、それすらカッコイイ!なんて言われて呆れる他なかった。
「どーでもいいから答えなさいよ。なっちゃんになんか聞いたの?」
咥え煙草で大樹のネクタイを引っ張ると「あ、はい!」って大きな声で答えた。
でもそのままネクタイを掴んでいる私にニッコリ微笑むと、その赤みがかった口をゆっくりと開いた。
「すいません、姐さんの過去、全部洗いざらい夏喜に話しました。それを聞いた上で夏喜は、それでも姐さんが好きだって俺には言ってましたよ。」
過去を話した大樹をヤキ入れてやろうかと思ったら、それでも私を好きだと言うなっちゃんの気持ちにネクタイをそっと放した。
なによ、それ。
煙草を持つ手が軽く震えているのが分かる。
樹だって私が頭の女だった過去なんて知らない。
胸のタトゥーはただ好きな男の名前を刻んだだけって思っている。
でも過去を全部話すつもりはなかったし、それでうまくいくならそれがいいって。
「姐さん?大丈夫ですか?」
煙草を大樹が奪って灰皿の上で潰す。
どうして涙が出るのか分からない。
私の震える肩を大樹がそっと抱いてくれるから、「大樹のくせに、生意気よ。」そう言って大樹の胸に顔を埋めると、思いの外ガッチリしていたんだ。
「その涙は、夏喜にですか?」
そんなの分からない。
でも、私の過去を全て知っても受け入れてくれたなっちゃんを嬉しく思わずにはいられない。
「樹でも、夏喜でも、幸せになれると思いますけど…――俺はあのなっちゃんが本気になった姿を少しこの目で見てみたいです。すいません、姐さんにこんな事言うなんてダメですよね。」
ポンポンって私を抱きしめながら大樹が色々喋るから、全部聞いてたらよくない!と思って半分以上聞き流したんだ。
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