【side ネコ】
「それでね、それでね!なっちゃんてばなんて言ったと思う?」
「…なぁネコ、それさ、夏喜の気持ち…俺も知っちゃってていいの?ネコは夏喜と仲が良いし、夏喜はネコにはちゃんと伝えておかなきゃって思って言ったんだろうけど、横流しに俺聞いちゃっていいのかな?」
目の前のこの男、瀬口黎弥。
今んとこあたしに一番近い男。
チャラいっていうか、祭りごとが大好きな黎弥は一見チャラく見えるけど、根は真面目な奴だった。
そして何より友情に熱い。
「いいでしょ、黎弥だし。なっちゃんはあたしが黎弥に話さないわけないって分かってると思うよ?」
「あーそっか!だよな!んじゃいいか!」
大口開けて笑う黎弥は、ちょっと抜けている。
そんな所も黎弥の魅力だとは思う。
お昼休みが終わってすぐに黎弥のいる広報にきて油を売るあたしを誰も注意なんてしなかった。
営業2課のワンフロアの半分後ろが広報で、ここから運が良ければかみけんくんの仕事姿すら見える。
視線を泳がせるあたしに、少し遅れて行ったんだろうお昼から帰ってきたかみけんくんが目に入った。
その後ろ、藤原くんとゆき乃先輩も一緒で、チラリとゆき乃先輩の視線があたしを捉えると大きく顔を歪めた。
ヤバい、気づかれた。
藤原くんの腕を離したゆき乃先輩がこちらに向かって歩いて来るのが分かった。
「逃げんなってネコ。素直になるんだろ?」
すかさず黎弥に突っ込まれて若干イラっとした。
あんな風にゆき乃先輩に喚き散らして消え去ったのが今更恥ずかしくてやっぱり黎弥の後ろに隠れたんだ。
「ネコ。」
黎弥の腕に痛いくらい巻きついて顔を埋める。
でも、次の瞬間ポスッてゆき乃先輩の手が頭に乗っかった。
「ごめんね、ネコ。嫌な気持ちにさせて。もう許して。ネコと話せないと辛いよ。」
てっきり怒られるもんかと思っていたから拍子抜け。
顔を上げるとゆき乃先輩が泣きそうな顔で優しく微笑んだ。
そうだった、ゆき乃先輩はなっちゃんに告られてそれこそ混乱しているはず。
今、あたしが力になれなくてどうするのよ!って。
黎弥の腕から離れるとゆき乃先輩をギュッと抱きしめた。
「しぇんぱいごめんね。酷いこと言って。あんなの全部嘘だよ!ネコが全部聞いてあげるから!」
ゆき乃先輩の「辛い」って一言に心臓が鷲掴みになるくらい自分まで辛くなるなんて。
子供の喧嘩だったら素直になれなくともあたし達はいい大人だ。
こんな馬鹿げた事で気まずくなるなんてそっちのが子供じみている。
「よかったな、ゆき乃。」
心配していたんだろう藤原くんの声に顔をあげると、その後ろにいたかみけんくんと目が合ったんだ。
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