だけどそのまた後ろ、かみけんくんを待っていたのか例の元カノが「健太ぁ、」腕にすりつく。
「ピアス、落としちゃったかもぉ。ベッドの下かシャワーの時かだと思うんだけど、探しといてぇ!」
…あたしに見向きもせずそれだけ言うと頬を手で撫でて去って行った元カノ。
元カノか今カノか分からないけど、否定すらしないかみけんくんを見ても自然と悲しい気持ちにはならなかった。
「健太さん別れたんじゃないんすか?」
藤原くんが片眉あげてそう聞くとにっこり笑って「とっくにね!」なんて余裕の返し。
チラリと一瞬あたしを見た藤原くんは、深深と溜息を着くと何故かあたしの腕を掴んで自分の前に立たせた。
「なにすんの、」
「黙っとけよ。」
被せるように言われて口篭る。
ゆき乃先輩も藤原くんを目で追っていて、もしもあたしが傷つく様なことだったならば、必ず止めてくれるって今なら分かる。
「じゃあこの子が誰とどうなろうと、健太さんにとってはどーでもいい事ですよね?」
「ちょっと樹!言い方。」
やっぱりゆき乃先輩が怒ってくれた、あたしの為に。
「健太さん、答えてくださいよ?」
かみけんくんに何を言わせたいんだろうか?
あたしの後ろ、黎弥の拳にグッと力が篭っているのが目に入った。
この人もあたしの為に何でもできる人。
「ネコちゃんが決めたらそれが正解じゃない?俺には何の権利もない。」
分かってたもん、かみけんくんがそーいう奴だって。
分かってたけど好きだったんだもん。
涙も出ないよ…
「二度と俺のネコを誘うなよ、健太。」
黎弥がなんか言ったけどゆき乃先輩があたしの事抱きしめるから何も聞こえなかった。
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