「健太さんには一生分かんないと思うけど…」
言い過ぎたとは思わない。
だけど目の前の健太さんは少し切なそうに「そうだな、ごめん。」微笑むんだ。
せっかく心配して話しかけてくれたのに、それを受け止めきれなくて。
自分の馬鹿さ加減に虚しさとドス黒い感情が渦巻いてどうすりゃいいのか分からねぇ…。
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「で、俺ってわけね!」
喫煙スペースで大樹くんを見つけた時はテンションがあがった。
心の中にあるモヤを全て吐き出した。
夏喜がゆき乃に告った事は伏せた。
まぁあながち大樹くんは分かってそうだけど。
「どーしてもゆき乃を取られたくないっすよぉ俺…。けど、夏喜が本気出したら、あ、いや…」
やべ、って言葉を濁したものの大樹くんはプッて笑うと「いっちゃんは、嘘がつけないね。安心して、なっちゃんが姐さんに惚れてる事は知ってるから!」やっぱりだった。
もしかしたら夏喜は夏喜で、自分の気持ちを大樹くんに吐き出していたのかもしれねぇって。
この人は、こんなに目が離れてんのに、その顔はなんてゆうか安心出来る。
俺より歳上ってのもあるけど、ゆき乃の事もよく知ってるし、言いたいことも何となく理解してくれる。
頼れる兄貴だよ、マジで。
「健太さんにも酷い事言っちゃって…。でも図星だったのかも。…心のどっかで俺、夏喜には勝てないって思ってるのかも。夏喜が本気でゆき乃の事取りに来たら負けるって。…不安でたまんないっす。」
今日は俺の恋人でも、明日には気持ちが変わっているかもしれないって。
繋ぎ止めておけない自分が悪いって、そんな馬鹿な妄想ばかりが頭を過ぎってしまうんだ。
こんなかっこ悪い姿は、とてもじゃないけどゆき乃には見られたくない。
「姐さんはいっちゃんのことちゃんと愛してると思うよ。確かにあのなっちゃんが本気で…ってなったら怖いものがあるなぁ。…けどさ、友達でいる方が上手くいくこともあるじゃん。今までが今までだけに、そう簡単に友達って枠は越えられないと思うんだよね。」
それから俺を見てマジマジと言い放った。
「そんなに怖いならもうプロポーズでもしちゃえば!?結婚したらさすがになっちゃんも手は出せないんじゃない?」
大樹くんに言われて初めて俺の頭に結婚って二文字が生まれた。
俺はこの先ゆき乃以外の女には興味なんて持てないと思う。
ならそれもありかなって。
やっぱり大樹くん、すげーや。
「そうっすね、考えてみます。」
心のモヤが取れたわけじゃないけど、ほんの少し雲の間から光が射し込んだ様だった。
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