陸拾伍 海岸沿い


吹き抜けの広いリビング。

ラブホクラスの大きなシャワールーム。

キングサイズのベッド。

シャワールームとは別に窓の外、豪華な露天風呂があった。

映画見放題の特大サイズのテレビ。

カラオケ、サウナ、プール…

とにかく凄かった。

食事は全てルームサービス付き。

ウェディングもできるようにってカップル特典もつけたいって魂胆で、なっちゃんと私が選ばれたらしい。

正確には、なっちゃんが会社に選ばれて、なっちゃんが相手に私を選んだというわけ。

元々仲が良いせいで、上の人達は私となっちゃんが付き合っていると思っているようだった。

樹と付き合いだしたのはごく最近だし、社内でイチャイチャする事もないし、誰も真実は知らないんだろうって思った。

連れてこられて、なっちゃんが本気で私のことを好きなんだと意識せざるを得ないなんて。

ここにきて、樹に誕生日をあかせなかったことを少し後悔してしまっていた。


とりあえずスイートルームを全部見終わると、下のフロントでバイクを借りた。


「もしかして、運転したい?」


大型バイクを見ていた私の頭にヘルメットを被せながらなっちゃんがそう聞いた。

猫を被ろうにもなっちゃんは先日大樹によって私の過去を知ったわけで。

だから私がバイクを乗り回していたってことも知っている。

そりゃあ確かに…


「行きだけ。帰りは乗せて?」

「安全運転でお願いします。」


笑いながらなっちゃんがカチっと首元のロックをつけてくれた。

数年ぶりにバイクに跨るとあの頃の風景が脳内で蘇ってくる。

煌びやかなテイルランプと爆音の中、こうしてよくバイクに乗っていたな…なんて。

今はちゃんと免許も持っているから問題はないけれど、あの頃は無免でよく走れたもんだと。

後ろに座ったなっちゃんが私を抱きしめるみたいに腰に腕を回したからエンジンをかけてふわりと発車した。

風をきって走るそれは最高に気持ちが良くて、たまにはツーリングでも行こうかなぁなんて思えるくらいだ。

潮の香りがしてきたと思ったら大通りの先に、広い海が見えた。

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