【side 夏喜】
「わぁー!!見て見てなっちゃん、海っ!!ねぇ海っ!!」
まるで初めて海を見る子供のようにはしゃぐゆき乃に自然と俺も笑顔になる。
バイクを停めて2人で海岸に降りていくと、ゆき乃はそのまま海の中に走り込んで行く。
俺より歳上だよね?あの人。
いい歳してそんなにはしゃぐ!?
なんて思うものの、そーやって童心に戻っている姿を見ているのは正直飽きない。
いっそ、このままここに2人きりになれねぇかなーなんて思えた。
「もーカッコつけてないで、こっち来て!」
いや別にカッコつけてはないけど…、いやつけてるか。
少しでもゆき乃が俺を見てくれるように。
少しでもゆき乃が俺を意識してくれるように。
少しでもゆき乃が俺から目が離せなくなるようにって、最大限お洒落をしている。
でもゆき乃の笑顔はそんな事すら忘れちゃうんだ。
「転ばないでよ!」
満更でもなくゆき乃に続いて海に足を入れる俺にふわりとゆき乃の手が俺を掴む。
「捕まえた!写メ撮ろ、写メ!せっかく海に来たんだし、いっぱい写真撮ろー!」
スマホのインカメで俺の頬に自分のを寄せてポージングしているゆき乃を見て、「録ってやるよ。」ゆき乃の肩に回しつつ手を伸ばして画面に2人の顔を収める。
カシャっと1枚録って「もう1枚!」ゆき乃の言葉にカメラを持つ手を左に変えると、俺はこっちに顔を寄せるゆき乃に覆い被さるように顔を埋めた。
カシャって音が小さく耳に響く。
でもスマホを持ったままゆき乃の唇を味わうように舌でなぞるとトンっと、胸を押される。
怒ってるだろうゆき乃を覗き込もうとすると顔を伏逸らされた。
「許可してないよ、キスしていいなんて。」
数秒後にそんな可愛い言葉がしてゆき乃を見ると真っ赤になっていたんだ。
「じゃあ許可して、もっとキスしたい。」
俺の言葉に困った顔で背を向けたから、すかさず後ろから抱きしめた。
困らせたい訳じゃないんだ。
だけど俺が自分の気持ちを伝えると困った顔をするゆき乃を見ると、やっぱり抱きしめたくなる。
「馬鹿よなっちゃん。なんで今なのよ。」
「…ごめん。でも俺以外の男の事は考えて欲しくない。我儘だって勝手だって思っていい。…どうしても譲れない。」
自分がこんな甘ったるい言葉を言うなんて思いもしなかった。
でもそれが、本気の恋なんだと思えた。
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