【side ネコ】
ゆき乃先輩となっちゃんが名古屋に行っちゃって、一週間独りぼっちだと思うと寂しすぎて死にそうだった。
てか今日ゆき乃先輩の誕生日だし。
なっちゃんの奴、抱く気満々じゃんね。
どーすんだろ、しぇんぱい。
「…この前はすいませんでした。」
カウンターに手を着いて珈琲を飲んでいると、後ろからボソッとそんな声がした。
振り返る前に隣に座ったのは、ゆき乃先輩の彼氏の藤原樹くん。
先週あたしに意地悪した奴。
ムスッとして無視しようとしたけどやめた。
そんな事しても虚しいだけ。
「なんですか?別に気にしてませんけど。」
「怒ってますよね?」
「別にいいです、もう。」
「…夏喜のこと、なんか言ってました?ゆき乃。」
…このいかにも自信なさげな藤原くんと、先週あたしに意地悪したのは同一人物か!?ってくらい別人に思えた。
ゆき乃先輩のことになると、意外と自信がないのかもしれない。
でもあたしはそんな男はいけ好かない。
「あのさぁ、かっこ悪いよそーいうの。」
キョトンとした顔の藤原くん。
たぶん、かっこ悪い…そう言われ慣れていないんだろう。
何言ってんの?って顔に書いてあるように見える。
だからあたしは大きく溜息をつくと、もう一度藤原くんの目を見て言ったんだ。
「余裕のない男は超絶かっこ悪い。今のあんたはダサダサ。なんでこそこそあたしに探り入れるみたいに聞くの?気になるならゆき乃先輩に直接聞けばいいじゃん!悪いけどあたしはなっちゃんの事応援してるから。ちゃんとあたしにも言葉にして伝えてくれたなっちゃんのがよっぽどかっこいい。女はそーいうとこで人のこと判断するから気をつけた方がいいよ、その弱々しい態度。」
瞬きを繰り返しながらあたしを見つめていた藤原くんは、図星だと思ったのか俯いて息を吐き出す。
立ち上がって缶コーヒーを買ってくるとすぐにまたあたしの隣に座った。
カコンと蓋を開けるとそれをゴクゴク一気に飲み干した。
「なるほど。あんたのその性格。ゆき乃が一緒にいる訳だ。図星だよそれ。本当はクソだせぇの俺。それ悟られないように最大限カッコつけてる。…けどゆき乃の事だけはそれができなくて。どうしても夏喜に取られたくない。」
一気に言うからちょっと早口でビビる。
こいつ、こんな喋るんだ!?
若干引き気味で珈琲を飲んだ。
自分の非を認められる男は嫌いじゃない。
「一応あんたと付き合ってるんでしょ、ゆき乃先輩!でもなっちゃんの本気は半端ないと思う。今夜ゆき乃先輩を抱く気だと思う!」
「はっ!?有り得ないでしょ!」
目ん玉飛び出しそうな藤原くんの肩に手を置くとあたしは空になった珈琲カップを持って立ち上がる。
まだ話したそうな藤原くんの耳に顔を近づけて続けた―――――
「だって今日はゆき乃先輩の27回目のお誕生日だもん!じゃあね。」
せいぜい頑張って!って肩を叩く。
途端に頭を抱え込む藤原くんを後目にあたしはCafeから出た。
.