エレベーターを待っていると隣に人影。
「ネコちゃん。」
あの日以来のかみけんくんがあたしの隣に立った。
その顔を見るだけでトクンと胸が脈打つ。
やっぱりかっこいい。
「ネコちゃんあのさ、」
「あっ、藤原くん!そう藤原くんがねちょっと落ち込んでたみたいだからあっちで。元気づけてあげたら?」
被せるように言ったのはかみけんくんの言葉に呑まれないように。
あたしはめっきりこの人の話術に弱い。
空気を読める人だからかみけんくんはあたしの言葉に従うはず。
「…ゆき乃さんの事でしょ?俺に助言できる事はないって言われたよ。確かにそうだと思う。一途な樹にフラついてる俺の言葉なんて必要ないって。――でもネコちゃん。もう一度俺にチャンスをくれない?」
トクンとまた一つ心臓が脈打った。
見つめるかみけんくんはすこぶる真剣で、その大きな瞳に吸い込まれそう。
ふわりとあたしの耳朶に触れるゴツめの手。
かみけんくんと勝手にお揃いにしたゴールドのピアスに指で触れるとニコッと微笑んで「よく似合ってる。可愛い、」ダメなのに胸がキュンと音を立てる。
目を見ちゃダメだと慌てて顔を背けた。
「かみけんくん。あたしは、あたしだけを見てくれる人がいい。」
「見るよ、俺!だからもう一度ッ」
グイッと後ろから引っ張られて首に腕が回された。
ふわりと香る匂いで相手が誰だかすぐに分かる。
「言ったろ、二度と俺の女に近寄るな!って。俺たち別れないから!」
黎弥があたしの前に立ちはだかってかみけんくんが見えなくなった。
「これ以上ネコの心を掻き乱すなよ、健太。もう一度言う、二度と俺の女に手ぇ出すんじゃねぇ!!」
そう言い放った黎弥はあたしをエレベーターに乗せることなく歩いて行く。
これでいいって自分に言い聞かせる。
この人の傍にいたら間違いなく幸せになれると。
「あれでしょ、夏喜もゆき乃さんもいねぇーから今週は俺が一緒に居てやる!」
ポンポンって頭を叩く黎弥に「上からかよ。」そう言うと「いいだろ!」強く肩を抱かれる。
黎弥の男臭い所は嫌いじゃない。
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