【side ゆき乃】
海での写真をネコに送ったら「ぴえん」って泣きのスタンプが返ってきた。
とてもじゃないけど仕事とは思えないこの旅行に申し訳なく思うものの、なっちゃんと向き合う良い機会なのかも…なんて前向きに思っている自分がいた。
海でのキスも、この前のキスも…嫌じゃなかった。
酒が入っているならともかく、素面でキスしてくるなっちゃんがちょっと可愛く思えてしまう。
危険だって分かっている。
いけないって…
今までずっと友達だって思ってきたけれど、ほんの些細な事で、ほんの一瞬で変わってしまう事もあるのかもしれない。
「私もネコの事言えないじゃない。」
躊躇うことなく普通に私と手を繋ぐなっちゃんは、樹から私を奪うつもり、なんだろうなぁ。
なっちゃんを好きだというこの気持ちが、恋心なのか、友情なのか、定かじゃない。
でも…――――拒否できない。
このまま私達、どうなっちゃうんだろうか。
「なに?なんか言った?」
海岸沿いを2人で歩きながらそんな事を考えていた。
今ここでなっちゃんに私からキスしたらどうする?
ジィっとなっちゃんを見つめる私に視線を絡ませてちょっと照れくさそうに顔を逸らすなっちゃん。
「無言で見ないでよ、照れるから。」
そんな可愛い言葉言うなっちゃんにくすりと微笑む。
思えば、いつもなっちゃんはそうやって照れくさそうにしていたかもしれない、なんて。
私が気にしていなかっただけで、こうして目が合うと「なんだよ、」ってはぐらかしていた様に思える。
キュっと繋がれた手を強く握るとやっぱりなっちゃんの視線が降りてくる。
「…夏喜、」
小さく呼ぶとなっちゃんの瞳が揺れる。
「それ反則。アウト。」
なんて頬を赤らめて顔を逸らすなっちゃんに、背伸びをして触れる。
繋がっていない反対の手でなっちゃんの頬をクイッと自分に向けるとゴクリと生唾を飲み込むなっちゃんと目が合う。
潮風に紛れて鞄の中でブーブーとスマホが着信を鳴らしていることにすら気づかないで、私の伸ばした手を空中で捕まえるとなっちゃんが小さく言った。
「好きだよ。」
どうしようもなく、胸がキュンと疼いた。
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